茅葺き現場日誌@UK London」カテゴリーアーカイブ

0709 London

帰国する前に8年振りのロンドンを歩くことにします。

ロジャーさんの家のあるイーストアングリア地方の玄関口になるのはセントパンクラス駅。この辺は大英博物館の裏手でロンドン大学のカレッジが集まり、文教地区というか上野みたいな雰囲気でロンドンの裏口っぽく居心地が良かったので、8年前にはUCLのドミトリーに転がり込んで街歩きのベースにしていました。
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ところが、今回訪英してみるとユーロスターのターミナルがウォータールーからこのセントパンクラスに移転していて、界隈はすっかりロンドンの表玄関になっていました。
19世紀に建てられた天蓋のなかも国際駅のコンコースにされ、在来線のホームはえらい端っこの方に追いやられてしまいました。

でも、この立派な造りの駅舎にようやく相応しい役回りが廻って来たとも言えそうです。
なにしろセントパンクラス駅の三階から上は長らく利用されずに廃墟だったそうですから。
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使われない建造物を出番が来るまで放っておけるというのは、何ともうらやましい話しです。日本では地震対策を思うとメンテナンスの行き届かない建物を、街中に置いておくなど考えられないことですから。
グリムショーがデザインした美しいウォータールー国際駅も、いつかユーロスターに代わる誰かに活用される日まで大事に放っておかれることでしょう。

古い建物を大切に使い続けるのがロンドンなら、新しいハイテクデザインのビルを建てるのもロンドン。
茅葺き職人なぞしていながら何ですが、僕はロイズオブロンドンは好きな建物の一つです。
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この吹っ飛んだデザインのビルはしかし、一切装飾を削ぎ落として合理主義を極めた姿でもあります。それならば、茅葺きに限らず民家だって住む人の暮らしの中で合理性を突き詰めた姿です。

そして合理主義を形にするのは職人技。僕は溶接については全くの素人ですが、それでもこのステンレスの手摺は施工された溶接工さん誇りで輝いて見えます。
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建築家が数学的に現したデザインを、現場で職人の手技が世の中に産み出すというのも、社会的な経験の積み重ねによって研ぎすまされた技を承けながら、最後には職人のセンスが一滴加えられる伝統建築と、僕の中では重なるものがあるのですが、いかがなものでしょうか。

セントパンクラス駅にせよテートモダンにせよ、古い建物をレストアする手法は大胆ですが、建物とそこで過ごした人々の歴史に対する敬意を感じることができます。
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このドックランズの街並も、そうであればこそ人を引きつけ暮らす街として再生したのでしょう。

まあ、ロンドン五輪も決まって再開発の勢いには、次第に歯止めが利かなくなりつつある危うさも感じはしましたが。
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建設途中のビルはどれも格好良く見えますけれどね。
出来上がった後も美しい街並を築く建物であってほしいものです。

だらだら続いたイギリスシリーズ、ようやく終わりです。
おつかれさまでした。

0708 Property

日本では滅びゆく郷愁の対象と見なされる茅葺き民家が、イギリスでは現在でも住宅として大切に使われています。
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「やはり英国は文化程度が高いね」とか仰る方もおられますが、僕の感じる両国の違いは「茅葺き屋根の葺き替えに銀行がお金を貸してくれるか否か」。

そう言うと大抵怪訝そうな顔をされるのですが、要は不動産として流通しているかどうか。
イギリスでは不動産広告にも茅葺き民家が、他の物件と同列にしれっと載っています。
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イギリスでも茅屋根の葺き替えは決してお安くはありません。日本の一部のような公的な補助金も一切ありません。

でも、古い建物は時間という厳しい審判を経たことで、何がおこるかわからない新築より信頼できると考えて、どうせお金をかけるならば新築よりも古民家に手を入れて、という訳です。
もちろん、イギリス人らしい骨董趣味もあるのでしょうが。
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手入れの行き届いた古民家を住宅として求める大きな市場があればこそ、銀行も茅葺き屋根に喜んでお金を貸してくれます。

ただし、イギリスの夏は乾燥して木が腐り難い、台風が来ない、地震も無い、と、老朽木造建築に優しい気候風土の国です。日本では「古い家は立派」と言われますが、実際には立派な家しか残れず朽ちてしまう、日本の環境とは少し事情が異なります。

イギリスにはこんな茅葺きの長屋もたくさんあります。かつての小作人長屋で、古民家ですがはっきり言って安普請です。
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茅葺きのワンルームですよ!良いなあ。
とはいえ日本の気候条件では、イギリスほど気軽に古民家に暮らす訳には行きません。余程しっかりした造りか大幅に手を入れないと、安心して住むこともできませんから。

でも、30年の住宅ローンを組むのならば、30年後に資産価値ゼロ、ごみとなりかねない新築を買うよりも、時を経たことで建物としての信頼が証明された、古民家をレストアして暮らす方がおトクだし、暮らしにも彩りが添えられるという考え方は、日本でもアリだと思います。

0707 Zen garden

現場は竣工して足場も解体されました。
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始めにも述べましたが、この四阿は枯山水のお庭を眺めて瞑想する場所として建てられています。

そのお庭は、日本の禅庭を勉強されたイギリスの方が、禅の思想に基づいてデザインされたそうで、コピーではないと説明して下さいました。
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イギリスの材料を用いて、イギリスの伝統的な工法で、イギリスの職人によって造られた枯山水。石も(苔の養生のために寒冷紗がかけてあります)全てイギリスで探した石を使っています。

庭を囲む築地塀は版築のようですが、これもイギリスにもある工法だそうです。
そして、瓦屋根と見えたものは天然スレート。棟は鉛、もちろんイギリス産。こちらでは茅葺き屋根の収まりにも鉛板は使います。
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外国の文化を吸収して消化し、アレンジして出力するのは日本人の特技かと思い込んでいましたが、このお庭は日本でもイギリスでもある、という感じでとても楽しいです。

ところでロジャーさんの家からロンドンの現場までは、高速道路を使って片道2時間。
この渋滞の中を毎日通うのは苦行でした。
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僕は免許証を携帯していませんから、助手席に座っているだけでしたけれども。
黄色いのは菜の花畑。バイオディーゼルの原料として栽培が奨励されているそうですが、その前に車の使用を控えたら?という思いが頭をよぎってしまいました。

もっともカントリーサイドのドライブは最高です。
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ロンドンから1時間も走れば、緑に包まれた緩やかなワインディングを楽しめます。
道沿いには茅葺き民家があたりまえのようにあらわれますし。

0706 Countryside

今回急な話しだったので国際免許証を用意できませんでした。休みの日でもカントリーサイドのロジャーさんの家からは、車が無いとどこへ行くことも出来ません。
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そのかわり、この国は歩くための小径ならどこにでもあります。
「通過する権利」に基づくパブリックフットパスが、畑や放牧地や、時に他人の庭!を横切ってどこまでも続いています。

7月初旬のイギリスの風景の美しさは、僕があらためて述べるまでもないと思います。
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ウォーキング好きにとっては天国でしょう。

緩やかな丘に広がる、生け垣で縁取られた麦畑。点在する雑木林と楢の古木。
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それは「人に飼いならされた自然」です。
かつての日本の農村と同じように。

フットパスのすぐ傍に、アナグマの巣穴がありました。
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アナグマもウサギもコマドリも、この農夫の箱庭のような自然の中で、人の営みが自然の摂理と同様に繰り返されて行くことを、疑いもせずに暮らしています。

しかし、見た目とは裏腹にイギリスのカントリーサイドも、少しずつ確実に荒んでいます。
生業の場として利用されなくなった雑木林は放置され、鬱蒼と繁り過ぎた木々で暗い薮になってしまっています。
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麦畑も機械化と農薬の使用で、既に必ずしも生き物の暮らしやすいところではありません。

茅屋根の葺き替えのためにスパーリガーを使うことは、ハシバミの木を定期的に伐ることで雑木林に正しい新陳代謝を促すことになります。
茅葺き用の品種の小麦の作付けが増えることは、減農薬有機栽培の小麦畑が増えるということです。
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茅葺き屋根を見て癒されるのは、その背後に人と自然の共生する、持続可能な暮らしが透けて見えるからかと思います。
ヨーロッパの茅葺きにおいて際立って伝統的な素材と工法に拘っているイギリスは、名実共に身近な自然環境に責任ある暮らしのシンボルとなっているのです。

0704 Netting

リガーを配して棟が固まったら、仕上げのハサミを入れて行きます。
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イギリスでは茅屋根全体にハサミをかけるということをしないので、専用の屋根ハサミというものはありません。剪定用の枝切りハサミを流用しています。

肉薄のストロー状をしているコムギワラは、固くて切り難いということは無いのですが、表面に光沢があるほどつるつるしているため、下手に鋭い刃物で切ろうとすると滑って逃げてしまい切り難い思いをします。
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枝切りハサミやこの「ローストチキン取り分け用ナイフ」も然り、粗く研いだ刃物の方がコムギワラを掴んで、ノコギリを挽く要領で切りやすいのです。
もちろん、本当に良く研いだ刃物なら問題なく切れるのですけれども。ヨシやススキ、稲ワラも切るならともかく、コムギワラだけならそこまで研ぐ手間をかける必要は無いですからね。

棟が新しくなりました。
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屋根全体にハサミをかけ無くとも、棟の段や軒を刈り揃えるだけで随分シャキッとするものです。

刈りくずを掃き落とすのに消しゴムブラシ。日本でなら竹ボーキを使うところですが。
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因みに棟はコムギワラでしたが、メインルーフはヨシで葺かれていて、谷になった部分など傷んだ箇所は今回修繕しました。

water reed(ヨシ)、wheat reedlong strawが、イギリスにおける茅屋根の三大葺き材です。

最後に鳥やリスが茅を引き抜くのを防ぐために、屋根全体に金網を被せます。
日本でもカラスが茅葺き屋根にいたずらしますが、脱穀後にも実が結構残っている小麦を使っているので、金網を被せるのは広く普及しています。
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茅葺き屋根の仕上げ用に販売されている、専用の金網です。
細い針金で編まれたネットを溶融亜鉛メッキした普通の金網ですが、柔らかく茅屋根に馴染みやすいので、下手にステンレスなど使うより具合が良いです。

丁寧に屋根に沿うように被せて、今回の修繕工事は竣工です。
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古い屋根に被せるとやや目立ちますが、新しい屋根の上では以外とうるさく感じないのではないでしょうか?

0702 Ligger

ケラバとなる箇所にもラップオーバーを配置しておきます。
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これで雨漏りの心配は無くなりましたが、このままでは風が吹く度にはためく棟になってしまいますから、押さえて固めてやらなくてはなりません。

押さえるのに使うリガー(ligger)もスパーと同じハシバミの若木を裂いたものです。
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近年では鉄筋にやや代わられつつあるものの、茅屋根を葺く押さえ竹としても昔から使われてきました。

押さえ竹として使う分にはそのままでも良いのですが、棟押さえは装飾も兼ねているので見た目も肝心です。
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継いで使ったときに仕上がりが滑らかになるよう両端を尖らせておきます。

スパーでリガーを固定します。
手で差し込んでおいて、マレット(片手木槌)でコンコンと叩いて仕上げます。
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スパーは差し込んでいるだけで屋根を貫通していないので、水平に差し込んでやれば雨漏りの原因にはなりません。
写真のように斜めに差し込んではいけません(苦笑)。

リガーを装飾的に配することもありますが、禅庭ということでシンプルに。
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一番下は仮り押さえ(temporary sway)。

参考までに。
茅葺き職人トレーニングコースでの拙作。
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セッジ(sedge)を使った課題作品です。

これは別の生徒の作品。
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棟の材料はコムギワラですが、ラップオーバーではなく突き当て(butt-up)仕上げの棟です。

材料や工法に多様性を残す点は、イギリスの茅葺き屋根の特徴と言えると思います。

0630 Long straw

茅というものは普通、モト(根本)とスエ(穂先)をきちんと揃えて束ねられていなければ、屋根に葺く材料としては使いものになりません。
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しかし、棟のてっぺんをカバーするラップオーバーは、表裏に均等の厚さで被せるためにも、あえてモトとスエが半分ずつ混ざった、両端の太さが対称の小麦ワラの束を使います。

これをロングストロー(long straw)と呼び、現在のイギリスでは最も伝統的なスタイルの茅材とされています。
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我々のイメージする普通の麦ワラがウィートリード、小麦ヨシと変な名で呼ばれ、このくしゃくしゃのゴモクのような束にストロー、藁という名が付けられているのは、かつてのイギリスでは脱穀後に手に入るムギワラは、こんな形になっているのが普通だったということです。

それはこのバスほどもある大きな脱穀機スラッシャー(thresher)が使われていたからです。
収穫された小麦の束をスラッシャーに放り込むと、内部では大きな金属製の刃が回転していて、かき回されたところにふいごで風を送ると、ワラは吹き飛ばされて実だけが下に落ちて行く仕組みです。
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当然、ムギワラは上も下もごちゃまぜに吹き寄せられてしまっています。これを使って屋根を葺くために工夫されたのが、ロングストローという素材であり技術です。

ロングストローで葺かれた屋根は、小麦の穂先が屋根表面に現れてふわふわした感じで、一見逆葺きのようにも見えますが、屋根面をかたちづくる半分はムギワラの根本側な訳ですから、そこそこの耐久性はあります。
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ところで、大掛かりな機械による脱穀で得られる材料を、「伝統的な」と言われても納得し難いかもしれませんが、実際継ぎ足し継ぎ足しで百年以上経った古い屋根をめくってみると、全てロングストローで葺かれていることが確認されています。
近世のイギリスでは荘園での大規模農業が主流になっていたということでしょうか。
スラッシャーも今はトラクターから平ベルトを引いて駆動させていますが、以前はベルトの先には蒸気機関が、さらに以前は馬が繋がれて動かしていたそうで、歴史のある機械なのです。

今回現場に持ち込んだ材料はウィートリードだけなので、ラップオーバー用に簡易ロングストローをつくりました。
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このようにばらばらにほぐしておいてから、あらためて束に括ると穂先と根本が均等に混ざり合います。そのとき、束の太さにムラが無く両端だけ少し細くなるように束ねてやると、棟に被せるのに具合の良い材料になります。

こうしてスカートとラップオーバーを組み合わせた棟の材料を配置し終わりました。
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日本では茅葺き屋根は下から上へと葺いて行きますが、イギリスの葺き方だと横へ横へと葺いて行くので、日本のような吊り足場が必要なく、ハシゴをかけて作業して行きます。

0626 Wheat reed

棟の材料としては小麦ワラが一般的で、ほかにスゲの仲間(セッジ.sedge)なども使われます。
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今回使うのも小麦ワラ。これは茅屋根葺き専用に栽培されている古い品種です。
品種改良が進んで小麦の収穫量の多い現代の品種は、その分ワラが短くなってしまっているからで、日本でもコシヒカリのワラは短く弱いので、しめ縄造りなどを専門にされる方は、酒米などやや古い品種を育てている農家さんからワラを集めるそうです。同じことですね。

茅葺き材料としては「ウィートリード(wheat reed)」と呼ばれています。
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わざわざ「ヨシっぽい小麦ワラ」という名がつけられているのは、イギリスで伝統的に茅屋根材として用いられて来た小麦ワラは、これとはかなり違った形をしているからです。
それについては追々ご紹介したいと思います。

古い棟を撤去してから新しい棟を被せて行きます。
置き並べた茅を押さえて止めた上に、次の茅を置き並べて押さえたところを隠す。これを繰り返し葺いて行く茅葺き屋根にとって、それ以上茅を置けなくなってしまう屋根のてっぺんをどう隠すか?そのための創意工夫が「棟」な訳です。
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弱点を雨水から隠すために、棟は屋根表面から段を付けて厚くしておく必要があります。
段を付けるために根本を下向きに取り付けるのが「スカート(skirt course)」。
その上に厚みを均等にするため根本を上向きに取り付けるのが「セカンドコース(second course)」。
それら全体を包み込んで一体化するのが「ラップオーバー(wrap-over)」。
棟の断面が三重になっているのがわかるでしょうか?

ウィートリードはあらかじめ充分に濡らしておいてから使います。
茅材は濡らしたまま放置すると黴びて腐って使えなくなりますが、屋根の一部になってしまえば茅屋根は通気性に富んでいますから、葺く直前に濡らす分には、屋根の上で乾く目処があるなら問題ありません。
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濡らすことでしなやかになり下地の茅屋根に密着し、小麦ワラ同士も隙間が少なくなり、乾いた後で目の詰んだ棟になります。

セカンドコースは裏表の茅材がてっぺんで突き合うように置きます。
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スカート、セカンドコースを固定するために日本のような押さえ竹を通していないので、まずスカートを端から端まで並べて固定し次にセカンドコース、では無く、ハシゴから手の届く範囲でラップオーバーまで仕上げてしまってから横に移動して行きます。

スカートなどを固定しているのは、ハシバミ(hazel)の若木を裂いて両端を尖らせU字に曲げた杭。
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スパー(spar)と呼びます。

スパーは折り曲げてあるのではなく、捻って曲げてあるので木の繊維が切れておらず、U字に曲げて茅屋根に差し込むと内部で真っ直ぐに開こうとして抜けなくなり、しっかりと効きます。
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ただ、細く裂いた若木とはいえ木材を「捻る」のは大変です。
8年振りの僕は何とかコツは思い出したものの、ひどい肩こりと血豆をこさえながらの作業でした。

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10年ほど前に美山町の茅葺き民家が、イギリスから招かれたロジャーさんという職人によって葺き替えられたことがありました。
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母国では茅葺きの学校で若い職人を指導している彼を少し手伝ったことが縁となり、その学校で半年間の研修に参加する機会に恵まれました。

ロジャーさんの家に下宿しながらのイギリス滞在は、技術の習得のみならず職人としての視野を大きく広げてくれました。
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そのロジャーさんから「Japanese Templeの屋根を葺くから」と呼び出されたので、慌ただしくイギリスまで出かけて来ました。

茅葺きといえどもその工法などに合理化の進む西欧圏において、イギリスの茅葺き屋根は地域毎に異なる葺き材や華麗な装飾の棟収めなどに、古来の豊かな地域性を残す点で特徴があります。
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ロジャーさんの葺き替えたイギリスの茅葺き古民家。

例えばオランダでは、エコロジカルな高級仕上げ材として茅葺きは人気があり新築も盛んですが、その棟収めは専用に作られたタイルによる簡便なものにほぼ統一されています。
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新築の茅葺き住宅が建ち並ぶオランダのニュータウン。

今回の現場は日系の仏教センター。ロンドン郊外の住宅地に建つ戸建て住宅の裏庭に、枯山水のお庭とそれを眺める茅葺きの四阿がありました。
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これは竣工写真です。
昔ながらの工法によるイギリスの茅葺き屋根の棟は、屋根そのものに比べて耐久性に劣るので、葺き替えを待たずに棟だけ積み直す必要があります。
京北に続き9000km離れたところでまた棟替えという訳です。