月別アーカイブ: 2008年9月

0927 壁塗り その1

仕事を終えて帰宅すると、荒壁の片面が塗られていました。
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何だか一気に家らしくなったように見えます。

先日こねた土を使って、左官屋さんが昼のあいだに仕事をして下さったおかげです。
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土壁は片側ずつ乾かしながら塗り重ねて行くので、乾く前に壁土が凍ってしまいかねない季節までに仕上げるためにも、暖かなうちに塗り始める必要がありました。

今日塗った土が乾いてから、反対側を塗ります。
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押し入れも、燻炭の床下断熱材と土壁に囲まれて、結露とは無縁のものになってくれることを期待しています。
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何しろ美山町は、夏も冬も湿度が多くてカビに悩まされるのです。
隙間風を防ぐためにアルミサッシやクロスで囲み、しかし断熱の不十分な茅葺きの家は、特に結露しやすいと不評なのですが、自然換気する茅葺き本来の機能を引き出す断熱を心がければ、むしろ他には無い快適な住宅となるはずだと思っています。

0927 軒付け

秋の気持ちの良い日和が続きます。
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現場のある大野集落は南向きの高台に広がり、山に囲まれた美山町でも日当りの良いところで、秋の花に囲まれて日差しが心地よく降り注ぎます。

軒がついて屋根のかたちが決まりました。
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下げ葺きで効率良く仕事を進めており、天候にも恵まれて捗ります。

ヒガンバナが満開になると、いよいよ秋だと感じます。
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屋根屋をしていて、良い仕事だなあ、と思える季節です。

0924 壁土つくり

砂木の家では、いよいよ壁塗りが始まります。左官屋さんと昨年夏から寝かせた壁土を1年振りにひろげたところ、混ぜ込まれていた藁スサはすっかり溶けて、まるで髪の毛のようになっていました。
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そこに軒刈りででた藁スサを加え切り返して行きます。

さらに同量の新たな壁土が運ばれて来ました。
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古い土、新しい土、藁スサをブレンドして、壁に塗る土をつくります。

上が新しい土、下が1年寝かせた土。
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こんなに変わります。

良い壁を塗るためには、三者を良く混ぜ合わせることが肝要。
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土にさわっているうちに百姓の本性が目覚めたサガラは、いつの間にか裸足で手に鍬。

柔らかな秋の日差しの中で土と戯れています。
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土は重くて体力のいる大変な作業です。このうえ寒かったら果てしなく辛くなるところですが、素手素足で泥に触れる感触は、原始的な快感を呼び覚ましてくれます。
何としても暖かな季節のうちに壁塗りをしておきたかった理由の一つです。何とか間に合いました。

0922  軒の解体

美山町の大野地区へやって来ました。京焼きの祖、野々村仁清の生家といわれるお宅です。建物は江戸時代に建てられたものですが。
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場所によって傷み方の異なる茅屋根、前回の葺き替えでさわらなかった北側の下半分を、差し茅によって上半分の厚みに揃えてほしいと依頼されました。

しかし、キノコまで生えた厚い苔を取り除くと、押さえ竹が出てしまう程屋根の傷みは進んでいました。
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もともと傷みやすい北側の下半分。予算を抑えながら丈夫にするために、差し茅ではなく下げ葺きで対応することにします。

水のまわった軒先は全て解体し、しかし雨に濡れたいない軒下の懐深い部分はそのまま残し、新たにその上に葺き重ねて行くことにします。
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差し茅同様に下地の調整を不要として葺く手間を節約しながら、屋根表面は新たに丈夫な材料に葺き替えて行きます。

0916 茅屋根竣工、土屋根準備

軒を全て仕上げて足場も解体。砂木の家の屋根がようやく竣工しました。
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長かったです。これほど手間取るとは。
本業のお仕事の傍らにご自宅をセルフビルドされる方々のすごさを、身を以て思い知ってしまいました。

さて、ようやく屋根屋の仕事が片付いたので、大工さんや左官屋さんは仕事の再開準備を進められています。
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小舞いのかかれた壁に土を塗る日程も決まりました。ついでに天井裏にも土を載せてもらうので、壁塗りに先立ちそのための準備を進めておきます。

載せた土がひび割れたりしないように、竹にワラ縄を巻き付けたものをこんな感じに配置しておきました。
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茅葺き屋根の天井裏に土を載せるのは関西では大和天井と呼ばれ、室内の保温や防災のために地域によっては広く普及しています。

作業のために照明を灯した屋根裏を小舞壁越しにロフトから見ると、教会みたいで何だか格好良いです。
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建物がその一生の中で一瞬だけ見せてくれる、小舞壁が光を透かす様子を楽しんでいます。
とはいえ、もちろん少しでも早く壁土を塗った方が良いには決まっていますけれども。

0915 かなり燻しています

軒裏を刈り落として、いよいよ最後の仕上げに軒先を刈込みます。
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ヨシを使って丈夫に葺いてある軒先を刈込むのは、なかなかに骨が折れます。

さて、土間ではあいかわらず火を焚いています。
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大工さんが松食い虫で枯れたアカマツを1本分持って来て下さったので、筒切りにしただけで割りもせずに燃やしています。

細かくしなくても火がつくのは、大量に含まれるこの松ヤニのせい。
ただし、このために松を燃やした煙にも脂が多く含まれ、お風呂やストーブを焚いたりすると釜に付着して傷めるそうで、ウチにまわって来たという事です。
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茅葺きの屋根裏が煤けるのは全然困りません。防腐、防カビのためにはむしろ良いくらいなので助かります。

ところで、小舞だけとはいえ壁が出来ると煙が屋根裏にまわるようになり、茅葺き屋根から空気が流れ出る様子が良くわかるようになりました。
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まずオーソドックスなのは文字通り煙出しから排気されるとき。

ところが日によっては煙出しからは煙があまり出て来ずに、屋根全体から湧くように煙が噴き出す事もあります。
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屋根裏と外気の気圧差なのか湿度差なのか、このように茅葺き屋根が呼吸する事で内部は快適に保たれるのでしょう。
ただ、そんな時には屋根に火が着きやすくなってもいそうで、もらい火で延焼して集落が全焼してしまうような火事も、こんな時に起きるのかもしれません。

曇った日に煙の量が多いと、軒先から煙が下りてくることもあります。
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ただし、砂木の家ではまだ建具のない今でも、居室の中には煙はほとんど入っては来ません。
茅葺き屋根のベンチレーターとしての機能を生かして、適度な換気と暖かい居室を実現しようとする試みは、今のところ上手く行っているように思います。

0912 軒刈り

砂木の家に戻って来ました。
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空はもう秋の空。日差しは強くても、乾いた心地よい風に吹くようになりました。

仕上がったところから足場を解体して行き、正面の軒を残すのみとなりました。
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茅葺き屋根を葺き下した縁側に腰掛ければ正面に見えるところなので、最後にもう一度集中して仕上げます。

造成から逃れた小さな庭に、ニラの花が咲きはじめました。
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以前は家の周りの土手の上に、背景に初秋の青空をレースのように透かしてたくさん咲いてくれていました。
建物が落ち着いたら、窮屈に過ごしながら待ってくれている草花が戻ってくれるように、庭も整えて行けたらと思っています。

0905 杉の葉葺き

テッタイとして活躍してくれていたクボさんとヨネクラくんが、滋賀県の朽木でのフェス山水人にスタッフとして参加しているので訪ねて来ました。

由良川を遡って美山町の奥へ奥へと進んで行くと、芦生の森をかすめて佐々里峠に出ます。
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見事な針広混交樹林が広がりますが・・・灰色の木は昨年までに、赤い木は今年、ナラ枯れにやられてしまった木です。関西でも指折りの美しい森の、広葉樹の半分以上は枯れてしまっています。
ここまで酷いとは・・・

峠を下りるとそこは、京都市左京区。美山町は京都市とお隣りさんです。雪の無い季節限定ですけれども。
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ここ久多の里は知る人ぞ知る茅葺きの里です。休耕田が茅場としてきれいに手入れされていました。

山水人の会場に着いていみると、テッタイチームの2人は滞在+イベント用の竪穴住居を建てているところ。さっそく手伝います。
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用意してあった真竹で骨組みを組んで、さて屋根を葺こうとすると茅が足りません。
この場所で一番身近に手に入る茅材というと・・・周りは杉だらけの山ばかりなので、枝打ちして杉の葉で葺くことにします。

竪穴住居のようにカーブした面に下地の竹を取り付けるには、無理に水平にしようとすると割れたり緩んだりしてしまうので、面に沿って斜めに取り付けます。
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現場で試してみればすぐ判ることだと思うのですが、何故だかこのように復元されている古代住居をまだ見たことがありません。

1日手伝って作業するとこんな感じになりました。
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あとは、自分たちで頑張ってくださいね!

0903 燻しています

裏側の軒が仕上がったので、雪で足場が折れた時に割れた瓦を直してもらいました。
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やはり多少は雨漏りしていたようで、垂木や野地板に染みが出来ていました。

そうでなくても大工さんの建前のあと、1ヶ月も雨ざらしにされて松の梁にはカビが生えたりしているので、土間で端材を燃やして毎日燻しています。
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こすっても消えないカビが、燻してから乾拭きすると煤と一緒にきれいに取れて驚きました。

そんなことをしながら、ひたすら刈込む毎日です。
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0901 八朔の日

毎年9月1日は、砂木のお堂の月遅れの八朔のお祭り。
まず朝から集落総出で林道の草刈り日役に汗を流します。
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仕事の都合で田舎に引っ越して来た当初は、高い住民税を払っているのに管理作業が住民に義務化されていることに反発を覚えたものでした。でも日々の暮らしに彩りを添えてくれる田舎の自然が、実は自然のものではなく先人たちの営みの積み重ねによるものだと気付いた時、自分の暮らしもそこに重ねて行く機会として、日役に参加するのは義務ではなく楽しみだと思えるようになりました。

それに、役得もちゃんとありますしね。
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刈り払い機を振るいながら防獣柵に絡んだヤマノイモのムカゴを摘んでいると、たちまちポケットが一杯になりました。
明日のお弁当はムカゴご飯。

午前中に草刈りを終えて、昼からはお堂の周りで盆踊りの準備。
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すっかり支度が整ったら一旦家に帰って汗を流し、お地蔵さんにお経を上げてから持ち寄ったご馳走を広げて、村の人たちみんなで頂きます

気持ち良く酔った顔に夕方の風が心地よく吹く頃には、三々五々引き上げて行きますが、中には話に熱が入って暗くなるまで語り合う人たちも・・・
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そしてすっかり日が暮れてしまうと、浴衣に着替えて再びお堂の周りに集まり、盆踊りが始まります。
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お堂の中では三度酒宴の花が咲いているようですが・・・