月別アーカイブ: 2006年6月

60630 夏のはじまり

そろそろ棟を積む、というタイミングでまた関西へ一週間程戻ってきました。自宅のiMacは戻るのを待っていたかのようにクラッシュしてしまったので、美山→神戸→宇治のショートトリップをまとめて。

美山も忙しそうでした。いつまでも鎌倉が片付かないので少々気が引けます・・・
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美山の自宅の周りはホタルが盛り。
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なのですが、ホタルの写真は難しいですね。
ゲンジは明るいですよ。

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藍那の里山は夏の装い。茅場のススキも順調に育っていました。
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ヤマダさんの京田辺のS家は竣工間近。こちらの現場に入るという話もあったのですが。まあ、鎌倉に行ったこと自体は良い経験になっていますけれど。
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S家近くの巨椋の池干拓地にはこんな田んぼが。これは稲田なのか蓮田なのか・・・。レンコンの収穫は稲刈りに合わせなければならないのでしょうか?
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で、今朝鎌倉に戻って来たのですが、まだ棟は上がっていませんね。あれ?
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060626 敷地が現れました

鎌倉から一時戻ってみると、敷地の造成が終わっていました。
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メールでのやりとりだけで進めてもらっていたため、実際に確認できて安心しました。

基本的に敷地に合わせて建てようとしているので、造成も最低限にとどめています。
こうして見ると広いような狭いような・・・
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いずれにしても石垣は積み直さなければなりませんけれども。

2006年06月23日

●0623 棟の下ごしらえ

昨日の段階でここまで葺き上がっていました。
葺いた茅の先端が棟木を隠してしまう前にやることがあります。
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下地の横竹は基本的には葺いた茅材が屋根裏にこぼれないように支えているだけのものです。が、棟や軒のように高さを揃えることに気を遣うときには、横竹を水平と高さを揃えて据えておいて、押さえの竹をそこに縫い付けるということをします。
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棟の大きさに合わせて高さを決めて、棟が傾いてしまうことが無いように表と裏の高さを揃えます。茅を締め付けても緩まないように太い竹を使い、しっかりと結わえ付けておくことも大切です。
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棟の下ごしらえをこなしたら後は棟まで茅を葺き上げていきます。もう少し。
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0623 棟の下ごしらえ

昨日の段階でここまで葺き上がっていました。
葺いた茅の先端が棟木を隠してしまう前にやることがあります。
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下地の横竹は基本的には葺いた茅材が屋根裏にこぼれないように支えているだけのものです。が、棟や軒のように高さを揃えることに気を遣うときには、横竹を水平と高さを揃えて据えておいて、押さえの竹をそこに縫い付けるということをします。
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棟の大きさに合わせて高さを決めて、棟が傾いてしまうことが無いように表と裏の高さを揃えます。茅を締め付けても緩まないように太い竹を使い、しっかりと結わえ付けておくことも大切です。
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棟の下ごしらえをこなしたら後は棟まで茅を葺き上げていきます。もう少し。
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0618 茅葺きに雨

雨ですねえ。
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現場に入っても、養生シートの上げ下げに時間を費やして、半日待機という日が続いています。
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仕事ははかどらないし体も休まりません。

さて、降った雨は茅葺き屋根に染み込むこと無く、屋根表面だけを流れ落ちるという理屈を、色々な機会に解説させて頂いていますが、実際に雨の日に見てみれば良く判るかと思います。
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軒裏を見上げれば濡れているのは先端だけです。
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万一葺き方に問題があったり茅材が悪かったりして、何らかの不具合により水が染み込んでしまうとこんなことに。
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一旦水が染み込むようになると、雨が止んでも容易には乾かなくなってしまいます。

屋根がそれほど減っていなくても、雨が染み込むような事が酷くなれば、やがて軒が落ちてしまうこともあります。
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これが軒近くではなく屋根の中程であれば雨漏りが始まる事に。

もちろん、通常ではこのような事にはならないはずなのですが・・・周りに木が茂っている事等も関係しているのかもしれません。葺き替えている本堂は大丈夫だと信じてはいますけれども。

0615 三和土

屋根の形が寄せ棟なので、葺き上がるに従ってペースが上がります。
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とは言うものの、残り少なくなったように見えて、まだなかなか。

ここ数日は、本堂の犬走りの三和土(たたき)を左官屋さんが直しに来られているので、足場の下からパンパン、と賑やかな音が一日中響いて来ます。
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名前通りに叩いておられますが、なかなか大変そうです。

060611 常総市の坂野家住宅(そして研修制度について)

覚園寺を一緒に葺いている奈良のタナカさんが、重要文化財坂野家住宅の門を葺き替える現場に、若手の職人数人を研修生として迎え入れて、茅葺師技術現場研修会を催すことを社団法人全国社寺等屋根工事技術保存会から委託されたそうで、雨の日に茨城県常総市まで下見に行って来ました。
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カマボコ型の丸い棟や、ケラバ(切り妻の端)に見られるスプーンでえぐったような形の大きな蓑甲(ミノコ)など、いかにも関東風なかたちの屋根でした。

研修という形で関東の葺き方を研究しつつ、じっくりと屋根葺きに取り組めるというのは、何とも魅力的な機会だと思います。ですが、せっかくタナカさんの指導を受けられるのであれば、奈良の屋根を会場とした研修会にしてくれたら良いのに、とも正直なところ思わないわけではありません。

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こちらは、母屋。北関東の屋根の見本のような、趣向を凝らしたつくりです。
まだ新しくて、聞くところによると昨年葺き換えたばかりとか。と、いうことはこれを葺かれた職人さんはおそらく現役でご活躍されているでしょうから、ここの門で研修会を催すなら、その方を講師にお招きしてはどうかとも思ってしまうのです。

(社)社寺屋根による研修会には僕も参加させて頂いたことがありますが、普段離れた地域で仕事をしている若い屋根屋が集まって、一緒に仕事をするというだけでも職人としての視野を拡げたり、自分を客観視することのできるまたとない機会を与えて頂きました。
ただ、地域による特色の強い茅葺きという技術で、なおかつローカルな技術の継承を重視しなければならない文化財の葺き替えにおいて、講師として来て頂いた職人さんが(個人としての力量はもちろん見事なのですが)、必ずしもその屋根に精通する地元の方ではなかったことは残念に思いました。

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茅葺きの豊かな地域性は必然によってもたらされた形態のはずなのですが、その意味を理解し技術を引き継いで行くためには、残り時間のあまりの少なさに焦りを感じずにはいられません。

0610 庭石菖・小バコのライブ

境内に多くはない日当りの良い場所に、ニワゼキショウが咲き始めました。
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地味ですが好きな花です。これ、美山の我が家の小さな庭にも夏中咲き続けてくれます。もう、そんな季節になったのか。
不在の間に自宅の周りは造成工事でユンボが走り回っているので、帰宅してももう当分は見れないかも知れません。毎年一輪だけ咲いていたササユリや、一叢のミズヒキソウも絶えてしまったかも。

ところで、平均年齢が60歳を下回らない宿舎は消灯時刻が夜8時半なので、毎晩のように鎌倉の街で家出少年になっていますが、あまり他人と話さずにただぼんやりと過ごしたり、溜まっているデスクワークを片付けたり本を読んだりしたいときによくお世話になっているcafe Goatee で、今夜はエリック・バックマンのソロライブがありました。
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P.A.無し、小バコでのライブは、そこにいる全員で雰囲気を作り出して行く一体感が楽しいです。

鎌倉は小さな街なのに(しかも夜が早いのに)週末毎にどこかでライブが行われていて、神戸にいた学生の頃以来の、音楽漬けな日々を送らせてもらっています。
梅雨が明けて海の家が開くと、そこでもライブが行われるとか。楽しみです。

0606 屋根めくり(3回目)

最後の屋根めくりです。
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棟収めは地域による違いの顕著な箇所なので、棟の解体に際しては前回のやり方を参考にできるように、検証しながら行います。

僕が現場入りした時点で雨養生の瓦は既に取り外されていましたが、休憩に縁側をお借りしている、境内に移築された旧内海家住宅の棟と同じように、瓦が重ねられた棟だったそうです。
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これ、最近どこかで見たなと思ったら、ナショナルトラストのシンポジウムで茨城の八郷を訪ねた折、当地で見たものと同じ収め方でした。

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これが常陸風土記の丘公園にあったものです。基本的に同じ手法ですね。

屋根をめくって行くと、葺き方にも関西では見られない特徴がありました。
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角の部分を独立してつくるのではなく、平面を押さえた竹をそのままコーナーに沿って曲げて、同じように押さえています。また、角の両脇を足場を吊る縄で仮押さえして、その痕跡が残っています。

こちらは常陸風土記の丘公園で見学させて頂いた現場の写真。びっくりするくらい、全く同じ手法です。
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つまり、鎌倉もいわゆる「筑波茅手」の活躍の舞台だったのか・・・いや、地元相模の屋根屋さんがいなくなってから、呼ぶようになったと考えた方が自然かな・・・

参考までに、これは美山での角付けの様子。
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コーナーの部分を先につくってから葺くので、押さえの竹は角の部分は押さえません。

これは藍那の交流民家。
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角のエッジを立てれば、コーナーまでしっかりと固めて葺くのは難しくなります。
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関西では面や角をきっちりと出すことに気を配ります。

関東の屋根は素晴らしい装飾に注力し、面や角のバランスや仕上げには、ある程度おおらかです。
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コーナーも押さえ竹でまわり込むようにして仕上げれば、角のエッジを立てるのはちょっと無理です。
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ちなみにイギリス南部の伝統的な茅屋根の葺き方や仕上げも、筑波流と同じような考え方をしています。
つくづく日本は多文化国家だなあ。

下地の上には屋根を葺く前に、10㎝ほどの厚さに茅が敷き詰められていました。
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主に葺き材の先が下地の下に入り込むのを防ぐためですが、特に下地も傷んではいないのでそのままにしておきました。

0604 鎌倉の現代住宅とか

捗らないと思いつつも、いつのまにか結構進んでいます。
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文字通り日々の積み重ねでここまで来ました。

まだ、葺き上げ残り3分の1、棟収め、刈込み仕上げが残っていますが、何とか折り返し点は過ぎましたね。
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明日あたりいよいよ最後の屋根めくりをしなければ。

ところで骨太なのに繊細で、桟瓦と下見板張りの外観が特徴的な、大正昭和初期の鎌倉の木造住宅を誉めたたえておりますが、新築の住宅でも何となく鎌倉っぽい雰囲気を持つものを多く見かけます。
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何が鎌倉風かと問われると困るのですが、杉板とモルタルが外観のデザインコードになっているような気もします。
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そういうのが流行なのだと言えばそれまでですが、良いデザインが流行ることが美しい街並を育んで行く訳ですから。
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そんな鎌倉でも、マンション開発は盛んなようで。
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集合住宅の高さ規制が5階までというのはさすがと思いますが(最近まで3階だったとか!)、マンションが増えると景観だけではなく、コミュニティの在り方も変わって来ますから、街の性格がどんな風に変わるのか変わらないのか。

0602 Corazon/Rihito Masuyama

鎌倉に来た頃は、境内の木陰は射干(シャガ)の咲き初めだったのに、いつのまにやら紫欄(シラン)が満開に。
屋根は仕上がらないのに、季節は移り変わって行きます。
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ところで、由比ケ浜のジュルネに晩ご飯を食べに行ったら、増山リヒトさんの写真展 corazon が始まっていました。
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壁にかけられているのはラテンアメリカの、明らかに貧困層の子供達の写真。彼らの置かれている環境に反して写真の雰囲気が明るいのは、原色に彩られた街と何より子供達が笑顔であること。

良い写真というのはピントがどうとかというよりも、まず被写体が良い表情をしているかどうかだなあ、などと思いながらひととおり写真を眺めて、リヒトさん本人は他のお客さんの応対をされてるし、ご飯が出来るまでの時間つぶしのつもりで「corazon journal」なるレポートを読み始めたのですが、すぐに引き込まれて2年間に渡る活動の記録を一息に読んでしまいました。

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リヒトさんはニカラグアに青年海外協力隊員として、孤児院での情操教育に携わるために赴任したものの、受け入れサイドのいかにもラテンアメリカらしいトラブルに巻き込まれて、スラムでのストレートチルドレンの救済にあたるNGOに派遣されてしまいます。
畑違いの業務内容、想像を絶するヘヴィな環境、やる気の無い派遣先。リヒトさんは任期の間を週末のサーフィンを息抜きとしながら、与えられた仕事の無意味さにただ耐えてやり過ごしてしまうことも出来たのだろうと思います。
でも、彼は誰に頼まれることもなく毎日スラムの一角で、学校へ行けない子供達を集めて読み書きアートを教え始めました。
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彼は笑顔の子供達を写真に撮ったのではなく、彼の助けを借りて笑顔を取り戻していく子供達が写った写真だったということを知って、随分と感動してしまいした。30過ぎてから涙腺が緩くなったかなあ。
レポートの内容をお伝えできないのが残念ですが、近くサイトを立ち上げるらしいので、その時をお楽しみに。