茅葺き現場日誌@美山/Ni邸」カテゴリーアーカイブ

1229 竣工

雪に追われながらの作業でしたが、何とか納屋の差し茅も終了。あとは仕上げの刈込みを残すのみ。
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納屋とはいえウマノリが3つでは少し寂しかったので、2つ足して小さなサイズのものを五組としました。

納屋の破風には破風板が入っておらず、茅をかきつけて蓋をしてあるだけです。
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大きな破風を設けた入母屋の屋根は、今でこそ美山の茅葺き民家の特徴となっていますが、古い時代にはこのように破風板無しが普通でした。
やはり、棟飾りとともに見栄えのする箇所なので、細工を施した破風板が入り、さらには次第に大きくなって行ったようです。

ウマノリは耐候性に優れた栗材ですが、新しい材との色合わせも兼ねて、念のため防腐剤を塗っておきます。
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天気予報では大晦日からお正月にかけて雪が降り続くようです。貴重な晴れ間に掃除を進められて幸運でした。

そして、竣工。
茅葺きの納屋と土蔵に挟まれて建つ、美山町の伝統的な屋敷構えに新しい屋根が映えます。
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これで、今年は仕事納めです。
皆様、良いお年を。

1227 差し茅

暖かい、暖かいと言い過ぎたのか、連日の雪となりました。
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お正月の前後に根雪が積もるのは例年のこととはいえ、もう少しだけ待ってほしかったところです。

一晩の積雪量はたいしたことはなくても、雪かきというのは、労働の成果が蓄積しないのが辛いです。
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なるべく余計なことに手間を取られないように、充分な養生を心がけます。

雨漏りをしないように万全を期していても、作業中に積もった雪が溶け出して、手元や屋根裏を濡らすことがありますから、帰る時には屋根全体をすっぽりと包んでしまいます。
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小さな納屋で良かった。
おかげで雪かきにあまり煩わされずに、差し茅を進めて行くことができます。

1221 棟上げ/刈込み

お天気続きで、無事に棟が収まりました。
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平行して、納屋の差し茅をするための足場を組んでいます。

ケラバを刈込む、美山茅葺き(株)のナカノさん。
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入母屋づくりの屋根にとって、ケラバは顔とも言える場所です。仕上げのハサミをかけると、草を積み上げた屋根が端正な表情に一変します。
手間のかかる隅の部分をひとつひとつ積んで来た職人にとって、仕事の成果を問われるとともに、誇らしくもある工程です。
ケラバを刈り落とすことが、屋根屋の花型のひとつかもしれません。

きれいに軒まで刈込み、終了です。
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仕上がった母屋の方は先に足場を解体してしまいました。納屋の差し茅をしている間に、掃除を済ませてしまうためです。

アリゴシから上だけ葺き替えた裏側には、意図的な段がつけられています。
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このような「つぎはぎ」のある屋根が見られることこそ、美山町では茅葺き屋根が暮らしの中で普通に使われいていること、言わば茅葺きが「生きている」ことの証しなのです。

1213 棟積み

暖かい天候に恵まれて、葺き上げ作業が続きます。
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裏側も棟まで葺き上がりました。

棟を積むあいだも、晴れてくれることを祈ります。
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特に風は困ります。

幸い今のところ穏やかな毎日。
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隣りの納屋の屋根も直すことになりました。
もうしばらく、小春日和が続いてくれると良いのですが。

1211 葺き上げ/小春日和

季節が秋から冬へと移り変わるにつれて、霧の出る日も少なくなりつつあります。
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久し振りに濃い霧に包まれた朝でした。

霧が晴れると昼間は陽射しがたっぷり。
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暖かな日は作業も捗ります。

陽射しに誘われてか、畔にはタンポポが花を開いていました。
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在来種のカンサイタンポポは、街に咲くセイヨウタンポポに比べて、地味と言うか、おしとやかな印象です。

1208 葺き上げ/裏側

しばらく野添の現場を空けているあいだに、美山では毎朝あたりまえに霜の降りる季節となりました。
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今朝も良く冷え込んでいます。

茅葺屋が笹葺きやら茅刈りやらしているあいだにも、現場では美山茅葺(株)の面々が着々と葺き上げ作業を進めておられていました。
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表側は新しい屋根がすっかり棟まで葺き上がっています。

そこで、反対側の屋根の葺き替えに廻ります。ただし、こちらはアリゴシから上だけの葺き替えになります。
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と、いうのも、屋根は北側南側だけでは無く、上と下でも雨水が流れる量の違いで傷み方に差が出ます。こちら側は傷みやすい下半分を既に何年か前に葺き替えているので、上半分だけ葺き替えるのです。
ちょど、10月に葺き替えたN邸のときの逆になります。

1121 棟の解体

めくり取った部分が埋まるまでには、まだもう何段か葺き上がることは出来るのですが、明日から茅葺屋チームはこちらの現場をしばらく留守にさせて頂くので、人数の揃っているうちに棟の解体を進めておきます。
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重いウマノリを下ろすのは危険な作業なので、慣れた人を揃えて段取り良く進めておく方が安心なので。

棟を雨から養生する杉皮を押さえるウマノリを外せば、その杉皮も外して下ろし、杉皮に養生されている棟に横積みした茅も解体します。
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どちらにしても、棟を交換するくらいに屋根の傷みが進んでいれば、棟の中にも多少なりとも雨が入ってしまって、積み上げた棟を止める縄もあちこち切れてしまっていますから。

棟から雨漏りしないように、厳重に、しかし作業する時には簡単にめくり上げることの出来るように養生しておきます。
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雨だけではなく雪が積もっても、シートを上げれば雪かきに煩わされずに作業を進めることができます。

1120 葺き上げ/小雪

小雪を前にして、とうとう今年最初の雪が積もりました。
美山では本格的な雪の季節は年末からですが、毎年小雪の時期に秋の終わりを告げるように一度雪が積もります。
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この雪に茅が潰されてしまうと、一番大切な根本の部分が折れてしまいます。美山の茅刈りは紅葉に急かされ初雪に追われて行われます。
来月始めには茅刈り体験会(カヤカル@美山)が予定されています。幸い今回はうっすら雪化粧程度で済みましたが、ひやひやものです。

現場も雪化粧。
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何度雪かきしても夜の間に降った雪でリセットされてしまい、毎朝雪かきしながら屋根を葺いた、何年か前の嫌な記憶が甦ります。

まあ、今年の秋は今のところ天候も安定しています。
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朝日が当たると薄化粧の雪はたちまち消えてしまいました。

無事に軒はつきました。雪の季節までに仕上がるように、張り切って葺いて行かなければ。
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1119 軒付け

今朝は冷え込んで、この秋初めて本格的に霜が下りました。
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眺めている分にはきれいでも、足場の丸太も真っ白になって、滑るし爪先は辛くなるし、地下足袋を履いた足には堪えます。

しかし、霜の降った日には、朝霧が晴れれば上空には青空が控えているものです。
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暖かな陽射しにぬくもりを覚えながら、順調に軒付けの作業が進みます。

紅葉が深みを増して行くにつれて、秋の実りもゆっくりと熟して行きます。
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美山にいるあいだは、旬の野菜が並ぶ農協の販売所を良く利用します。
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ナメコも秋の深まりとともに大きく育ち、街のスーパーで売っているものとはかたちからして随分違います。食べごたえがあって、美味しい!

1118 下地揃え

古屋根をめくり取ったら、屋根下地を直します。
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丸太と竹をワラ縄で結わえてあるだけの茅葺き屋根の下地は、しなやかで丈夫なのですが、時間が経つと縄が切れたり竹が虫食いにあって緩んでくるので、葺き替えの度に整えてやります。

こちらのお宅のように、茅葺き屋根に瓦の庇を差し込む錣(シコロ)屋根とせずに、昔ながらに茅葺きのまま軒まで葺き下ろしていると、レン(垂木の丸太)の分だけ軒裏から屋根裏へと空気の抜ける隙間が保たれます。
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屋根裏の換気が充分なされることが、茅葺き屋根の寿命に大きく影響しているように感じているので、屋根の一部なりとも葺き下ろしにしておくと、良いのではないかと思います。風情もありますしね。

屋根に穴をあけたので、屋根裏の様子も良くわかります。
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合掌材と棟束を併用する構造は、あまり古くない美山の茅葺き屋根に多く見られます。
毎年刈り貯めた茅がこの小屋裏一杯なると、ちょうど1回分の工事に間に合うくらいの量になっています。
最近ではお施主さんが茅を用意されることは少なくなりましたけれども。

こちらのお宅のある集落は西向きの高台にあり、美山では珍しくきれいに夕焼けが見られます。
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盛りを迎えた紅葉が夕日に照らされて、山が燃えるように輝いています。