茅葺き現場日誌@美山/A.S邸」カテゴリーアーカイブ

0723 斜め軒付け/メガヤ

お施主さんが用意されて屋根裏に保管されていた茅の中に、3束だけメガヤが混じっていました。
手前の束がそれで、奥のススキと比べてみて下さい。
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美山で茅屋根を葺くようになって10年以上過ぎましたが、古茅でないメガヤを見たのは初めてでした。
かつてメガヤを育てていた標高の高い尾根筋の茅場は、美山ではもう絶えてしまったと思っていました。

断面を見ると穴が開いていて水切れが良く、合掌集落で有名な五箇山でかつて主流であった「コガヤ」のように、耐久性があると言われています。
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3束だけでしたからまとまった茅場があるという訳では無いのでしょうか、生えている姿を一度是非見ておきたいものです。

さて、屋根の方は今日までの3日間、「きたむら茅葺き屋根工事」改め「美山茅葺き株式会社」から、応援に来てくれていたので随分捗りました。
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屋根の大きさは決まっていますから、やたら屋根屋の人数を増やせば良いというものではありませんし、「テッタイ」さんの人数とのバランスも考える必要もありますが、美山サイズの屋根だと両角を付ける2人+真ん中に2人というのはなかなか恵まれた編成でした。

先方の現場の合間の、忙しい時間を割いて手を貸してくれました。ありがたい。
おかげで手間のかかる「斜め軒」の部分が仕上がりました。
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まあ、もっといてくれても良かったのですけれど w

0721 軒付け/理想の現場

現場の周りには夢に思い描くような農村の風景が広がっています。
田んぼも石垣も畔も畑も、こちらにお住まいのお年寄りのご夫婦による、日々の営みの中で繰り返される手入れが行き届いています。
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屋根裏から出した茅が積んである田んぼが一枚、田植えをせずに休んでいるのは、茅葺きの際の作業場とするのを見越して、田植えを控えて下さっていたからです。田んぼには再使用できない古茅やゴモクが積まれ、葺き替えのあとには堆肥がつくられます。一部はそのまま畑のカボチャのマクラにもなります。
家の脇にはきれいな谷川の水を田んぼに引き込むための水路が流れ、汚れた手や顔を思う存分洗うことが出来ます。そこには家の裏手の横井戸の水も流れ落ちていて、これからの季節どんなに暑い日でも冷たい水でのどを潤すことも出来ます。

適切に造林され様々な樹齢の木が混じる針葉樹林と、椎茸栽培のホダキにするために適度に伐り出された雑木林が混じる山裾には、茅葺き屋根のための茅場が広がる、茅葺き民家に素晴らしく似合う風景です。
逆に言えば茅葺き民家を維持していくことが、この風景を守る一助となっているとも言えます。
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茅葺きに暮らすということが、周りの自然環境に対して責任あるライフスタイルを実践していることの、宣言だと見なされるような世の中にして行きたいものです。

おじいさんとおばあさんは、ロハスとか言葉とは関係なくすごいことを、さりげなく実践されておられますけれど。
などと考えながら、軒を付けました。

0719 屋根裏の茅

すっきりとは晴れませんが、久し振りに青空を見ました。
今の季節あまり晴れても困るのですけれども。
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まず古屋根を解体して開いた穴から、刈り貯めて屋根裏に保管されていたススキを搬出します。

丁寧に刈って束ねられたススキが、きれいに積んでありました。
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茅屋根の裏側に沿った外周部分に作業用のスペースを残し、向きを揃えて積んであるので保管中に茅が曲がったりしておらず、搬出もとても容易にできました。

屋根裏に「軽く一杯」という程度の量でしたが、外へ出してみると結構な量であることが良く解ります。
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茅の山の向こうに見えるきれいに畔を刈込まれた田んぼと、枝打ちの行き届いた山のあいだに、茅刈りをして手入れされた原っぱがあります。
茅場は田畑(人)と山(野生)との緩衝地帯でもあります。

茅の搬出を済ませてから下地の手直しをして、ようやく屋根葺きが始まります。
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まずは軒付けから。トタンの庇が多く、場所により高さがまちまちなので、少々手間がかかります。

0717 雨が続くと干上がります

美山町の鶴ヶ岡地区にある、きれいな谷川沿いの集落を一番奥へ入ったお宅へ、葺き替えにやって来ました。
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予定では一週間以上前の着工のはずでしたが、今日まで雨に降り込められてほとんど進められずにいます。
雨の日が休日の屋根屋としては、朝目を覚まして寝床の中で聞く、たまの雨垂れの音には安らぎを覚えるのですが、さすがにこれほど仕事ができないでいると心身ともにおかしくなって来ます。

何よりフトコロが干上がってしまいます。生活して行けません。
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台風が過ぎ去ってもまだ空はぐずついていますが、我々はこれ以上ぐずぐずしてはいられません。きれいな屋根でお盆を迎えて頂けるように、湿っぽい中足場を組んで古屋根を解体する機会をうかがいます。

北側の屋根一面に厚く重なった苔は、たっぷりと雨を含んで青々としています。まず、これを鍬でかき落としてしまいます。
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屋根裏に保管してある茅を搬出して軒を付けるために必要な、最小限の部分をまず解体します。

しかし、屋根裏の茅をいくらも出さないうちにまたもや本降りの雨に。
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僕等が濡れるのは一向に構わないのですが、お施主さんが刈り貯めた大切な茅を濡らす訳には行きません。捗らない進行にストレスを抱えつつ、本日もまた早仕舞いでした。