月別アーカイブ: 2006年2月

0212 カヤマル3

朝はいきなり雪に見舞われてどうなることかと思いましたが、「カヤマルの日は晴れる」というジンクスは崩れず。
マル3も事故も無く無事終了いたしました。

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これで、カヤマル’06のイベントは全て終了しましたが、茅葺き交流館と来園者の皆さんとの長いお付き合いは始まったばかりです。茅葺屋としても、今後も引き続いて茅葺きの背後に広がる豊かな文化を、共に体験し再興していくための企画を準備し続けます。末永くおつきあいの程を。
sh@

0210 刈り込み/赤い謎

棟が上がったら、上から足場用の丸太を外しつつ、屋根用の大きなハサミで刈り込みながら仕上げていきます。

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ところで、カヤカルの際に参加者の方から「ススキの切り口が赤いのは何故ですか?」「赤いのと白いのとあるのは何が違うのですか?」と、必ず尋ねられます。

何故なんでしょうね。
実は自分でも気になっていまたが、未だにはっきりしたことは分かりません。経験上、茅として良質なススキだと赤いものが多くなるような気もしますが、きちんとした統計がある訳ではありません。
関西随一の茅場である奈良の曽爾高原では、赤いものはチガヤ(血茅?)と呼ばれて、良い茅材として喜ばれているようです。伊勢神宮の修理に行った際には、先方の用意された茅材の中に赤いものは見当たりませんでした。赤いものを嫌って取り除いているのか、神宮の茅場には赤いものが生えないのかはわかりませんが。
sh@

0209 続 棟収め

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化粧とマキワラ固定のために孟宗竹(ユキワリ)を据えて、ケラバとマキワラの裾、杉皮の裾を刈り揃えて、棟が完成しました。
大工さんのそれとは違いますが、「棟が上がった」と言います。
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ご祝儀で皆で一杯飲むならこのタイミングですなあ。
最近はあまりやりませんけれどね。

さて、実は美山町辺りの棟は「ウマノリ千木押さえ」という手法が一般的で、マキワラを使うことはあまりありません。もちろん、京都市内等で仕事する際には当たり前に使って来ましたが、それは古屋根を解体するときに前のやり方を参考にしたもので、親方の生きた技から学んだものとは違いました。
今回の現場に応援に来て頂いているタナカさんは、奈良の天理が地元の屋根屋さんなのですが、そのあたりでは広くマキワラが使われています。棟収めの際にはより美しく丈夫にするための、様々な細かい心配りを勉強させていただきました。
代々受け継がれる職人の技は必ずしも完成したものではなく、時代の変化に合わせた試行錯誤の積み重ねを経て日々進化してきたものです。時間をかけて積み上げられたそれらの技も、受け継いでいくためには仕事を共にして、手で覚え頭で理解する必要があるのですが、残り時間のあまりの少なさが惜しまれてなりません。
sh@

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タナカさんのアドバイスを受けて収めた、ユキワリの継ぎ手

0208 棟収め

茅葺き屋根は、並べた茅材を押さえた竹を下地に縫い止め、その竹を隠すように次の茅材を並べて・・・という風に、葺き上がってきました。
では、棟まで上がってきてそれ以上茅材を置けなくなったら、どうするのか?最後の茅材を押さえた竹を、いかにして合理的に雨水から隠すかという工夫が、地域性豊かな茅葺き屋根の棟の収まりとなってあらわれています。

交流民家では関西地方で一般的な手法の一つである、「マキワラ針目覆い」で収めました。神戸市内では播磨寄りの地域で多く見られます。
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まず、葺き収めた茅の上に、棟と平行な方向に横向きに積み上げた茅材を、表裏の最後に押さえた竹に通した針金で締めて、カマボコ状にします。

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締めた針金にさらに針金を通して、その上に一回り小さな茅カマボコを載せます。その針金にまた針金を通して・・・と、断面が三角になるまで鏡餅のように重ねていきます。

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最後に押さえた竹を隠すようにワラを並べて、竹で押さえて止めます。この時、端のワラがこぼれないように、ワラ束を杉皮でくるんだものを拵えておいて、両端に固定しておきます。

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雨養生のための二つ折りにした杉皮を敷き詰めて、風で飛ばされないように竹で押さえます。

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竹を押さえるための針金をとったところは、杉皮には隙間が出来てしまいますが、それを隠すために茅の束(マキワラ)を載せます。

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マキワラを杉皮でくるんで棟の雨養生は完成です。
sh@

0227 (屋根だけ)竣工写真

週末は季節外れの嵐となりましたが、素屋根が完全に取り払われた交流民家の茅葺き屋根は、何事もなく無事でした。
ま、それで当たり前なんですけれどね。
茅葺き屋根こそが建物を守るシェルターな訳ですから。

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設計監理と施工管理による検査はすでに終わっていましたが、ある意味この嵐が本当の竣工検査のようなものでした。無事クリアして引き渡しです。
ほっとすると同時に、何とも言えない寂しさも。

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茅葺き屋根は場所によって傷み方に差がありますから、葺き替え工事の場合は屋根を幾つものパートに分けて、時間差を設けて葺き替えていきます。ですから仕事を認めて頂いて、ある屋根の面倒を見せてもらえることになれば、10年に一度くらいはその屋根のどこかの修理に訪ねて来る事になります。

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しかしながら、交流民家のような新築工事の場合は、最も傷みやすい部分でも葺き替えが必要になるまでには30年くらい保つ(ハズ)ので、僕のキャリアの中で直接面倒を見る可能性のある機会は、棟の修繕くらいになるかもしれません。
そう考えると寂しさもひとしお。
sh@

カル(3)の収穫をマル(2)で確認

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あいな里山公園内で行ったカヤカル(3)。その時の収穫量を、マル(2)の最中に確かめたところ、35〆でした。
「〆(シメ)」とは、茅を扱う単位で、1.5mの縄でひとくくりの大きさ。地方によって呼び名もサイズも色々あるようですが、スタンダードと言えるのがこの「〆」と言ってよいでしょうか。 もっとも「〆」という字をあてるかどうかは、定かではありません。mo@

0206 ケラバを積む

入母屋屋根の、ハフ(煙出し)のまわりをケラバといいます。
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屋根は棟に近くなるにつれて小さくなるのに、真ん中を並べている職人の人数はかわりませんから、両角を担当している人はペースを合わせるために次第に忙しくなります。そのうえをケラバ積みには手間がかかるので、このところ写真を撮るヒマもありませんでした。すみません。
sh@

0205 未だ茅干し

ところで、カヤマルの際に参加者の皆さんにも手伝って頂いた、阿蘇から来た茅の乾燥作業。実はまだ続いています。
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今年は初雪が重く、降る時期も早かった上に、そのまま根雪になってしまったので、茅刈りの出来なかった地域がたくさんあったようです。
日本最大の茅産地である、御殿場の富士山麓は太平洋側なので、逆に雪が少なかったようですから、来年度にいきなり茅飢饉に陥るということはなさそうですが、茅場は毎年の手入れが欠かせないものなので、影響が来年だけで済めば良いのですが・・・
sh@

0202 庭木のせい?

今日は午後から冷たい北西風が吹き出しました。しばらく暖かな日が続いていたので堪えます。
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せっかく風除けのネットを足場に張ってもらいましたが、屋根のすぐそばに植えられた木の枝を避けるために、大きな窓が開いているので相変わらず寒い現場です。

なんだか愚痴ばかり書き込んでいますが、茅葺き屋根を長持ちさせるためには、庭木に対しては神経質すぎるくらいでちょうど良いと思います。木の陰になる場所が傷みやすいのはもちろんですが、北側の枝から落ちる雨垂れも屋根にとっては致命的です。もちろん、枝が屋根に触れてしまうのは問題外。近くに枝を張った木があるだけでも、蒸散作用によって屋根を傷めることがあります。

とは言っても実際の仕事場では、屋根のためにせっかく枝振りの良い庭木を剪定してくれとは言えませんし、茶室などの場合は先に庭ありきですから、苦労させられます。美山町ではどの家も正面にアカマツを一本植えるのですが、「松の梢が棟を越すと縁起が悪い」と言われています。屋根に影を落とさないように、こまめに剪定しなさいという戒めでしょうか。
sh@