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0624 苫編み

木造瓦葺きの日本家屋、でもその二階は日本の夏に快適な場所とはいえません。
断熱材入れて、気密性を高めて、エアコンの効きを良くして、屋根に太陽電池パネルを設置する、という方法もありますが、太陽電池でエアコンの電気代を賄うよりも、茅葺きにしてエアコン不要にした方が合理的だと思いませんか?
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夏に涼しく快適な茅葺き屋根のやさしさを、田舎の茅葺き民家に限らず暮らしに取り入れる方法はないものかと模索しておりましたが、このほど「キセカヤ」というものを考案して、試しに縄文部屋こと淡河茅葺き屋根保存会くさかんむり秘密基地もとい事務所に施工してみました。

2階や屋根裏部屋の籠ったような暑さを除くため、瓦の温度を下げて輻射熱を防ぐ装置として、薄くても抜群の遮熱性能を発揮する茅葺きの特性を活用します。
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まずは、稲ワラを元末揃えて編んで「苫(とま)」をたくさんつくります。ちょっとしたコツはありますが、きちんと習えば誰でもきれいな苫を編むことは出来ます。
何より高い屋根の上に登らなくても良いので、子供からお年寄りまで皆で手分けしてつくれるのが良いところ。

炎天下での作業は厳しいので、出来上がった苫を早速広げて陰をつくりました。
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その涼しいこと!タープのつくる日陰なんかとはまるで違います。これはかなり期待できそうです。

苫葺きのこと

つい60年程前まで、日本では市街地を除けば屋根は茅で葺くのが当たり前でした。私たち職人が普段手がけさせてもらっている、民家の母屋や寺社以外の、水屋や家畜小屋や炭焼き小屋の屋根はどのように葺かれていたのでしょうか?
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わざわざ職人を呼ぶような場面でなくとも、濡れては困るものには必ず屋根をかけていたはずです。
それはこの堆肥小屋のような、軽くて薄い「苫葺き(とまぶき)」という屋根だったかもしれません。

「苫」とはワラやスゲなどの草を、元末を揃えて編んだものです。元の方を棟側にして、軒から棟へと重ねながら屋根の上に広げると、逆葺きの茅葺き屋根ができあがります。
ちなみに元末を交互に草を編んだものは「筵(むしろ)」や「簾(す)」。
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あらかじめ編んでおいたものを巻いて束ねておけば、これをさっと広げて仮止めするだけで雨露が凌げる優れものです。耐久性はありませんが、手軽に雨養生するにはうってつけな葺き方です。

苫葺きは高度な職人技ではありませんが、かつては誰でも当たり前に出来たことでも、一旦失われてしまうと取り戻すのは容易ではありません。運良く記録に残され、かたちをなぞることが出来ても、経験を重ねて蓄積されたコツというのは、共に手を動かさなければ共有できないものです。
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難しい屋根を葺く技術は、文化財としてかたちとともに遺されますが、かたちに残らない、茅葺きとともにある暮らしの記憶に触れたいと、職人の手に依らない茅葺きを探し続けていました。
しかし、苫葺きはトタンやビニールシートに取って代わられていて、職人不要の茅葺きはこの収穫後の稲藁を養生するワラヅトくらいしか見付けられないでいました。

そんな時に、偶然出会って衝撃を受けたのがこれです。
苫葺きの大きな小屋。茅葺屋が活動拠点を置く神戸と美山を結ぶ道中の、三田のとある田んぼに冬のあいだだけ現れていました。
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干し草の発酵熱を利用してウドを栽培する、ウド小屋
いつもと違う道を、めずらしく昼間に走って、たまたま出会うことが出来ました。

その頃僕は独立したばかりで、日常=出稼ぎの「渡りの職人」として各地を巡っていましたが、毎年晩秋には三田の田んぼに通い、ウド小屋の葺き方を勉強させて頂きました。
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と、いってもご夫婦による完成されたチームワークの前に、ほとんどお手伝いすることも出来ず眺めているばかりの日が多かったのですが、一緒に苫を編ませてもらったり、一服どきに棟収めの手解きをして頂いたりしていました。

中から見上げると光がこぼれるほど薄い苫葺きのウド小屋。完全防水ではありませんが、強い雨に降られても、中は乾いています。
現在ではウド小屋もビニールハウスと電気ヒーターで栽培することが殆どになっていますが、「雨を防ぐのに蒸れない」「風を遮るけれども日射の熱も遮る」等の、ビニールシートには無い苫葺きの機能故に、こだわりを持った農家さんによって使われ続けていたことで出会うことが出来ました。
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ウド小屋は現役の苫葺きというだけではない、暮らしの中の茅葺きとして素晴らしいストーリーをたくさん見せてくれたのですが、それらについてはまた、あらためてご報告します。

苫葺きはウド小屋に適していただけではありません。強い風が吹いてもたなびいて受け流すため、ビニールシートのように孕んで大きな音を立てたり、トタンのように飛ばされて人に怪我をさせたりすることが無いという、街中で使うにあたって適した性能も持っています。

茅葺き屋根を昔話の中に留めず、苫葺きの特性を活かして現代の暮らしの中に取り入れる、新しい茅葺き「キセカヤ」をご提案します。
見学会+体験会 カヤコヤ'10@淡河/神戸にて、見て、触って、葺いて、感じてみて下さい。

1103 子供たちの茅葺き

町屋の並ぶ京都の街中の幼稚園の生け垣越しに、かわいらしい茅葺き屋根があたまを覗かせています。
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そろそろ傷みが目立つこちらの屋根を、ご縁があり葺き替えさせて頂くことになりました。

大きなウロを持ったトチノキの大木を、上手く柱にして建てられたキノコみたいなふたつの茅葺き小屋。それを渡り廊下がつないでいます。
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大人がくつろぐには少し小さいけれども、幼稚園児にはちょうど良いスケール。

秘密基地のようなジャングルジムのような小屋の中を、園児たちははしごを駈け上ったり穴をくぐったり、走り回って遊んでいました。
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せっかく文化財指定を受けても、誰からも忘れられてしまったホルマリン漬け標本みたいに「遺され」ている茅葺き民家も少なく無い中で、毎日たくさんの子供たちと暮らす屋根に関われるのは、職人としてもうれしいことです。
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山城萱葺き屋根工事の皆さんに助けてもらいながら、葺き替えが始まります。

茅葺き屋根とふれあう月間 神戸で開催

神戸市北区には約750棟の茅葺き民家が現存しています。
北区役所では、茅葺き民家を中心とした北区の田園景観を多くの人に 知ってもらい、またふれあってもらう機会として、区内に点在する茅葺き民家を活用して様々なイベントを実施します。
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■11/7 音楽ライブ@箱木千年家-千年の眠りから呼び覚まそう
■11/13 陶芸教室@十場家-草屋根の下で、土を感じる
■11/27 クラシックコンサート@赤井家〜落ち着いた雰囲気で、夜の調べを聴く
■12/4 茅刈り@花山中尾台-住宅地の道路法面で、茅に触れてみる

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詳細、申込は神戸市北区HPまで。

茅葺き民家のある農村風景が市街地と隣り合うのが神戸の魅力、気軽に秋の1日を茅葺きと過ごしにいらして下さい。

 

1016 ビエンナーレ+茅葺き古民家

古民家族が活動させてもらっている西宮市山口町の船坂集落で、西宮船坂ビエンナーレが開催中です。
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再生中の古民家2棟も、もちろん参加とのこと。ちょっと覗きに行ってきました。

庇のシコロ(錣)屋根の瓦が葺き直されている!
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見えるところだけ・・・でも随分しゃんとしましたね。見違えました。古瓦を再利用しているところがまた、良い感じ。苫葺きの軒も補強されているし。

アーティストの作品発表の場となり、古民家そのものもアートとして体験できるように設えてありました。
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アートと茅葺きと、おもてなしのお茶に人が集います。

週末には古民家族の学生メンバーがボランティアで常駐して、古民家の解説などこなしているそうです。
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学生にとっても、たくさんの人たちと話をする良い機会となることでしょう。

夜には別に再生中の茅葺き古民家で、つくり直された囲炉裏のお披露目がありました。
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火も、人を集めますね。

0930 サマータイム終了

ブログではワークショップの様子ばかりご紹介していたので、「茅葺屋は仕事をしとんのか?」とお叱りを受けてしまいましたが、もちろんちゃんと現場は動いております。屋根葺かないと食べて行けませんからね。
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神戸市北区にある市登録文化財のH邸。6月末から始まった屋根修復は、梅雨時の大雨とその後の酷暑の季節を通じて進められて、終盤に差し掛かっております。

と、言っても厳しい気候のもと働いているのは、棟梁として現場を仕切るサガラであり、山城萱葺き屋根工事から応援に来て下さっている職人さんやテッタイさんたち、それにアルバイトの皆であって、僕はお施主さんに謝ったり市役所に謝ったり、職人さんに謝ったりしているだけですけれども。
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現場に常駐していないので、ご紹介するようなことが何もありませんでした。

特に梅雨明けからの異常な猛暑の中では、現場の皆は本当に頑張ってくれました。
こちらのお宅は普段はお住まいではなかったので、サマータイムを採用して朝5時から作業していたようですが、それでもきつかったことには変わりは無いでしょう。
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9月も末になってようやく通常時間に戻せるようになって来たと思ったら、今度は急に気温下がり過ぎ。
夏バテで弱った体には冷たい雨は厳し過ぎますが、最後まで健康第一、安全第一でよろしくお願いします。

0920 刈込み仕上げ

5月から延々と続いて来た、船坂集落の旧坂口家の屋根葺き替え、泣いても笑っても今日仕上げないと、いよいよ後がありません。
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みんなが寝ている間に、こびとさんが刈り落としてくれた軒裏ですが、あえて学生の仕事も残しておくという、心憎い配慮もされていました。

こびとさんが・・・というか、山城萱葺き屋根工事のヤマダさんなんですけれども、堅いヨシやススキで葺かれたところを刈り落として、柔らかく刈りやすい稲ワラの部分を残してくれています。
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さらに所々稲ワラの部分も仕上げてあるのを参考に、職人さんから借りた屋根鋏で軒刈りに挑戦。
言う程簡単ではありませんが・・・

半日かかって何とか軒裏が落ちました。
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最後の工程、軒の上端を刈り込んで仕上げます。

職人と並んでさくさくと・・・リズム良くとは行きませんが、重い屋根ハサミの扱いにも、少しは慣れて来ましたかね。
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仕上がった面から足場の解体も進めて行きます。
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安全に解体するために切断する順番はもちろん、危険な番線クズが散らからないように、クリッパーで切断する箇所にも気を遣いましょう。

家の中では大掃除が佳境を迎えています。
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屋根の葺き替えをすると大勢出入りしたり、屋根裏から茅を下ろしたり上げたり、どうしてもほこりっぽくなりますからね。
しかし、そこまで磨いて、前よりもきれいになったのでは?

押さえ竹を縫い止める際に屋根裏にはみ出したり垂れ下がったりした茅を、一本一本手鋏で取り除いて行きます。
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このひと手間を惜しまないことで、縁側に座って眺めたときの屋根の表情がずいぶん違います。

最後に職人が軒端のラインを揃えるハサミを入れて、全ての工程を締めくくります。
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足場を解体して掃除が済んだら、竣工です。
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古い屋根と新しい屋根の境のブルーシートは、しばらくこのままにしておかざるを得ませんが、とにかく雨漏りは無くなり、みんなが集える広い軒先が出来ました。

0905 こびと

その1:
茅葺きの下地は一番高い棟木から、一番下の草桁まで1本のレン(垂木)が通っています。
古民家族で再生に取り組んでいる旧坂口家では、後補の庇を解体したりしたこともあり、屋根全体を受け止めてバランスを取る大切な草桁が、建物の本屋から切り離されて独立柱だけで支えられていました。
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軒がついて屋根が重くなって行くに従い、不自然な揺れ方をするようになって危なくなっていましたが、ある日河原工房の大工さん、ユイさんがふらりとやってきて、梁で繋いで行ってくれました。

下屋の草桁が本屋の柱と梁で繋がり安定しました。
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これで安心して葺き進めることができるようになりました。

その2:
「今年最後の茅葺き3連日」と銘打ちながら、僕の段取り悪くて9月に作業が持ち越してしまった旧坂口家の屋根葺き。
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正直に言えば、9月あと1回の活動で本当終わるのかすら不安だったのですが、ある日山城萱葺屋根工事の茅葺き職人ヤマダさんがひょっこり訪ねて来て、軒を刈り落として行ってくれました。

愛車KTMアドベンチャーでのツーリング中に、偶然通りかかった山城萱葺き屋根工事の丁稚ワタナベ君も手伝ってくれました。
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これで残す作業内容は間違いなくラス1です!

0829 刈込み

今回葺き替え予定の分の屋根は無事葺き上がりました。
上から下へと順に足場に吊っていた丸太を外しながら、ハサミをかけて仕上げて行きます。
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大きな屋根鋏に初めて触れる人も、職人の指導を受けながらザクザクと。

葺く時に叩いて形を整えながら葺いては来ましたが、やはりきれいに面を揃えるためには仕上げのハサミかけは欠かせません。
叩いて折れたり潰れたりした茅の木口も、良く研いだハサミでシャープに刈り揃えることで、屋根の水はけも良くなります。
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新しく葺いた屋根と古い屋根の境目は、本来なら差し茅で調整して合わせるところなのですが、時間が押しているので、ひとまずブルーシートを挟んで対応しておきます。

ていねいに施工した軒まわりですが、最後にもう一度手を入れて整えます。
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傷みやすい箇所ですが、意匠的に目立つ場所でもあるので、長くきれいな状態を保ってもらわなければなりませんから。

手直しが済んだら軒裏を刈り落として、軒の端を刈り揃えて足場を外したら、今回の工事箇所は竣工です。
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です・・・が・・時間切れ。

「何としても仕上げる」などと大口叩いておりましたが・・・すみません、段取りが悪くて。手弁当で来てくれている職人さんのこだわりや、暑い中頑張ってくれている学生さんや一般参加者の皆さんのやる気を、時に空回りさせてしまいました。

我ながら現場まわすの下手で滅入ります。懲りずに来月にもう一度だけお付き合いください。

0827 続々・葺き上げ

ようやく空には秋の気配が漂いはじめましたが、地上の暑さは全く衰えないなか、古民家族の旧坂口家の屋根葺き替えが続きます。
あ、↑ブログ始まっているみたいです。
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今回は傷みの酷い軒から3分の2の屋根を葺き替えて、棟の部分には手を付けません。
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ですから軒から葺き上がって来た屋根を、古い棟の下に潜り込ませてやらないと屋根として繋がりません。
丸太を突っ込んで古い屋根を持ち上げ、新しい屋根を差し込む隙間をつくっておきます。

今日も暑い暑い中、屋根の上でも下でもみんな働き者ですね。
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と、思ったら・・・電池切れですか?
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立ったまま寝ているし・・・
暑いからね。

まあ、アイスでも食べて。
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葺き上がりまでもう、あと僅か。頑張りましょう。
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