茅葺屋の住まい@砂木の家/新築」カテゴリーアーカイブ

0822 アングル

砂木の家の施工記録写真を撮って下さっている、parammmさんが現場に来られました。
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屋根屋の作業の様子は、屋根の上から撮影した方が手元の様子が明らかになります。が、足場の無い上方からの撮影は、普通のカメラマンさんには無理な話。
ところが、地下足袋持参で棟に上がってしまうparammmさん。茅葺屋のヘルメットが似合い過ぎです。

屋根屋とはいえ自宅の棟に上がれる機会はそうそうありませんから、僕も棟に上がって砂木谷の眺めを楽しみます。
砂木の谷の集落の一番奥にある我が家の屋根からは、谷全体を見渡すことが出来ました。正面奥に谷の入り口の高台に在る、茅葺きのお堂が見えます。
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砂木に茅葺きのままで残るのは、拙宅とこのお堂ともう一軒だけ。でも、トタンを被っている家はもちろん、瓦葺きの家も全て茅葺き屋根を下ろして2階を上げたもの。目に入る全ての家が茅葺き民家からの改築です。
本当にちょっと前までは、茅葺きの家があたりまえだったのですね。

少し目線を上げると、ナラ枯れで赤茶けた木の目立つ山が・・・春の新緑、秋の紅葉、雪景色と、四季折々の姿で楽しませて来てくれた山だったのですが。
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里に近いこの山は薪山として雑木を伐られ続けることで、常に若々しい広葉樹が新陳代謝しているのが、ついこのあいだまで当たり前でした。薪がもう必要なくなり木を伐らなくなったことで、山が枯れて行くのも当たり前だとは僕にはどうしても思えません。
茅葺き民家が無くなって行くのを当たり前と思ってしまうことは、ナラ枯れのような放置された自然の荒廃と無関係ではありません。砂木の家での様々な試みが、茅葺き民家は失われ行くものだという決めつけを、少し変えることになってくれたらと願っています。

0821 藁スサ

お盆が明けたばかりだというのに、秋雨のような冷たい雨に度々降られます。
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雨漏りの心配は無いとはいえ、雨の日の刈込み作業は捗らない上に仕上がりも悪くなるので、できれば避けたいところです。
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そこで雨のかからない軒裏の刈込みを進めておきます。
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軒裏には茅を屋根に置く角度を稼ぐために稲ワラが使われています。この稲ワラの刈りくずはとっておいて、壁土に練り込むスサに使います。
ススキやヨシといった他の茅材の刈りくずは堆肥の原料に。茅葺き屋根はゴミを出さないゼロエミッションを、とっくに実現してる建築技術です。

0820 集合住宅

お盆が明けて作業再開。いよいよ仕上げの刈込みが始まります。
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屋根を葺きはじめて丸一年。長かったです。仕事の合間に作業を進めることが、これほど手間取ることになるとは。本業の傍らで自宅をセルフビルドされている方々の偉大さを思い知らされました。

ストロー状のヨシの並ぶ茅葺き屋根は、穴の中に巣を作るハチたちにいつも大好評。狩人蜂(種類不詳)が幼虫のエサにするバッタをせっせと運び込んでいます。
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ただ彼等は有視界飛行で飛んでいるらしいので、これから仕上げのハサミをかけて屋根表面の地形が変わってしまうと、つくりかけの自分の巣の位置が判らなくなってしまうようです。
ハサミ仕上げの最中にエサを抱えたままうろうろしているハチを見かけると、いつも申し訳ない気持ちになりますが、ハチのお母さんたちのためにも、茅葺き屋根は葺いたらさっさと仕上げてしまわなければならないようです。

家の裏庭にミョウガが顔を出す季節になりました。採るのは鹿と競争です。
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クボ料理長は美山より更に山奥へと旅立って行ってしまいましたが、丁稚サガラが天婦羅にしてくれました。茅葺屋のスタッフはみんな料理上手でありがたいです。摘みたては香りも歯触りも最高!

0813 棟上げ/壁小舞

棟が上がりました。
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小さい家なのに、棟飾りが7つも載ってしまいました。屋根の勾配が急過ぎて、棟が長くなってしまったからです。
(大工さんの)棟上げの時慌ただしかったとはいえ・・・まあ、屋根屋でも新築に携わる機会は貴重だし、お施主さんの家ではなく自宅で失敗を経験できて良かったと思います。

棟飾りのウマノリはトタンを被せて必要なくなったお宅から安く譲って頂いたり、形が悪くお施主さんのところでは使えないものなど、寄せ集めを切ったり削ったりして形を揃えて使っています。
半端物だけれども、安全のためにも栗材にはこだわります。

かつてはその重さで棟を押さえていたウマノリですが、現在では針金で屋根裏の下地丸太に綴じて締め上げています。
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水を吸うワラ縄で屋根を貫通して綴じては雨が漏ってしまいます。雨の伝わり難い針金が登場したことで、意匠は同じでも機能としては、ただ置いてあるだけから挟んで固定するかたちに劇的な進化が隠されています。

棟が上がり雨漏りの心配が完全に無くなったので、内装の工事も本格的に始まりました。
左官屋さんが来られて壁の下地小舞をかいて行かれました。
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本当は小舞かきも我々でやりたかったのですが、結局時間を作ることが出来ませんでした。ただし、小舞にした割竹は、昨年自分たちで伐り出して割って用意していたものです。
すかすかの小舞とはいえ壁が出来ると、柱だけだったときより屋内に風が流れるようになりました。ちょっと不思議な気もしますが、適切な入り口と出口を用意してやった方が、吹きさらしよりも空気が動くということでしょう。

0808 棟を積む

やっとこさ、棟を積む日が来ました。
棟積みの工程も何度かご紹介していますが、何度でも繰り返します。よろしければご覧下さい。
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一番上まで葺き上がった茅を押さえる竹は、屋根裏のあらかじめ高さと水平を揃えた下地竹(セメダケと呼びます)に縫い止めます。棟の基礎となるこの竹の、前後左右の高さが揃っていることが安定した棟にするために肝要です。

棟と水平方向に茅を積み上げ、押さえ竹から取った針金で束ねて固定します。
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さらに親亀の上に子亀が乗るように、順に小さな束を積んで行きます。
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こうして屋根勾配なりの棟を積むのですが、美山の茅屋根は勾配そのものが急なので尖った棟になります。

基礎となっている押さえ竹を養生する意味で、半分に切った茅の穂先の方を並べて止めます。
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棟には杉皮を被せて雨から養生するので、ここに用いるのは軒裏同様に稲ワラを使っていました。
最近では屋根の耐久性を増すために、我々の仕事では雨のかかるところには茅の穂先も使わない傾向にあるので、ワラに代わって穂先はこういう箇所に活用しています。

0801 風景

真夏とはいえ夜明けの山里の空気はひんやりと肌寒い程です。
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茅バイトのアサヤンさんの入れてくれる、本格チャイでからだを目覚めさせて屋根に上がります。

ようやく棟近くまで上がって来ました。水平が保たれているかどうか、離れたところから見て確認します。
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新築なので、ご近所の家並に馴染んでいるかどうかも気になるところです。

人と自然の共生する、先人の営みの積み重ねよって生まれた里山の風景。
そこに相応しい1ページを重ねることが出来るかどうか。
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家の向きなどもご近所の建て方に倣っています。集落の人たちの体験話を聞いていると、やはりなるほどと思わせられることが多々ありますので。

そうした試行錯誤も繰り返しながら、まもなく棟を積むところまで葺き上がります。
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まあ、なかなか竣工しないのは、屋根屋の仕事が進まないからなのですけれども。

0729 リアル・サマータイム

思えば棟上げしたのがちょうど一年前でした。仕事の合間に進めているとはいえ、何とも時間がかかってしまっています。

日陰の無い屋根の上で働くには、あまりにも厳しい酷暑の季節。せっかく自宅で仕事をするので、以前から暖めていた夏向けのタイムスケッジュールを実行してみることにします。
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朝5:30、明るくなりはじめたばかりの涼しい空気の中で仕事を始めます。

7:30、朝日が顔を出すと、早くも刺すような日差しには力が漲っています。
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小休止して軽く朝食。

10:00になるともう屋根の上は灼熱。暑いというより熱くなっていくのをかわして、一旦撤退します。
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暑さはこれからが本番ですが、既に上から下まで汗まみれ。とりあえずシャワー。
シャワーを浴びるとスイッチがあらためて入るので、日陰に入って今度はデスクワークを続けます。

お昼ご飯はしっかり食べます。シェフのいる現場で良かったなあ。
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昼食後はハンモックで、1時間くらい気合い入れて寝ます。
茅葺き屋根の下のハンモックは、良い風が入って最高。うっかりするとそのまま溶けて無くなってしまいそうになります。

15:30に作業再開。まだ残っている熱も、日が陰るに従い流れ落ちて消えて行きます。
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日の出前、日の入り後に作業するので、虫、とくにブトに悩まされるのが難点ですが、夏の直射日光に曝されて寿命を削る思いをするのに比べれば、はるかにましです。

19:00頃、一日が終わります。
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お風呂に入って夕食を軽く手早く済ませ、明日の早起きに備えて寝てしまいます。
そのためにも昼間にデスクワークを済ませておかなければなりません。なかなかそう上手くは行きませんが。

一週間分の仕事を、ダイジェストで一日にまとめてみました。

0513 テッタイ

茅葺屋のテッタイさんは、もちろん料理が上手なだけではありません。
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クボさんは茅の扱いにもすっかり慣れて、屋根屋の先手先手に段取りを整えてくれています。

そしてもうひとり、藍那以来ともに茅刈りかやぶき音楽堂と転戦して来たヨネクラくんも、鯉のぼりに見守られながら茅切りに励んでいます。
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ザクザクと良い音を立てて押し切りを扱い、茅を加工する姿も今では堂に入っています。

と、盛り上がって来たところなのですが、再びここで一旦休止。
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急ぎの仕事を頼まれたので、越前まで遠征して来なければなりません。
自分の家はどうしたってあとまわし。アリゴシまで葺けたし、もう一息ですけれどね。

0508 料理長'08

暑くも無く寒くも無く、天候も安定していて屋根を葺くには絶好の季節!
少ない人数ではありますが、仕事は捗ります。
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とは言うものの、夏日が多くなってくると、吹く風は爽やかでも屋根の上の日差しが堪えます。

そこで肉体労働者を支える、美味しくて栄養あるごはんを用意してくれているのは、藍那の現場でのアルバイト以来、テッタイを努めてくれているクボさん。
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今日のランチは「たっぷりキノコと庭のミツバ和えパスタ」

そして3時の一服にはおやつも!
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手造り豆乳プリン玄米フレークwithそこらへんに生えているアップルミント。
料理長のいる現場は、みんなのモチベーションが違います。

0506 薫風

雪に潰された足場の修理もすませました。
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2年越しとなってしまった屋根葺きを再開します。
どんな職人でも自分の家は後回しになってしまいますから。言い訳ですけれども。
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山笑う季節。
日々色濃さをまして行く山を眺めながらの仕事となりました。

初節句を迎える息子のために鯉のぼりもあげてみました。
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今年は屋根葺き用の足場があるから良いけれども、来年から「屋根より高く」あげるのは大変だなあ。茅葺きは棟が高いから。
来年もまだ足場があるかも・・・などという恐ろしいことは、もちろん考えてはいません!