0215 縄文の下地 ? ネソ巻き

勝坂遺跡は相模川の広い河原を望む河岸段丘の上に広がっています。段丘の下には「はけ」と呼ばれる泉が湧き出し、陽当たりの良い台地は晴れた日にはいかにも住み心地が良さそうです。
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ですが、関東ローム層の上に黒ボクが厚く堆積した段丘上は、呆れる程水を含みやすくて雨が降るとこうなります。
そして、先週からずっと雨模様です。

遺跡に隣接して米陸軍の座間キャンプが広がり、離発着を繰り返すヘリコプターが毎日のように頭上をかすめる騒音の中、スギヤマさんたちは泥にまみれて「ベトナムがー、ベトナムがー(意味不明)」とうなされながらネソ巻きに励んでくれました。
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おかげさまで無事屋根下地ができあがりました。

「木で木を縛る」ネソ巻きの不思議。ネジ釘はおろか縄すら使わずに組まれた屋根下地です。本格的な稲作が始まっていない縄文時代には、稲ワラでなった縄は無かったでしょうから。
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ネソが乾いて行くに従って、よりきつく緊結されて行くそうです。
木をねじって使うところを見ると、いつもイギリスの茅葺き屋根で使うスパーを思い出します。身近な素材の特性を使いこなす技術も、磨き抜けば同じような発想に行き着くのでしょう。縄文時代の人たちも、きっと。

ところで復元される住居は実はもう1棟あります。そちらの小屋組が仕上がるまでまだしばらくかかりそうなので、それまでネソは水に浸けておきます。
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とにかく、使うまで乾かしてしまってはだめなのです。そういう意味では雨模様も結構なのですが・・・泥は何とかしてほしい。

0210 縄文竪穴式住居の復元 - ネソねり

神奈川県相模原市にある縄文時代の集落跡、史跡勝坂遺跡に復元竪穴式住居の屋根を葺く為にやって来ました。
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各地で復元された竪穴式住居には、茅葺き民家の屋根を地面に置いたようなものが多く、僕自身何度もそんな「復元住居」の屋根を葺かせてもらう機会がありました。
しかし、職人として茅葺きと長く関わる中で、それが農業の営みに深く根差した技術であり文化であることを知るにつれ、中世や古代の屋根は近世のお米づくりを中心とした社会で育まれた茅葺き民家とは、ずいぶんと違っていたのではとの思いが強くなって行きました。

一方で地域色豊かな茅葺きの文化には、田んぼの都合による効率優先だけでは無い、その土地の事情に即した茅葺きの技術も今に伝えられています。
南方系の稲作文化を支えた竹と縄(稲ワラ)を用いない、雪深く険峻な飛騨、能越地方の山地に残るヌイボク(ナラなどの若木)とネソ(マンサクの若木)を使うネソ巻きの技術もそのひとつです。
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竹を伐り出す金属の刃物も、藁縄をなう為の稲ワラも無かったであろう、縄文時代の屋根下時を組むために、ネソ巻きを今に伝える数少ない職人さんである、飛騨かやぶきのスギヤマさんに一肌脱いでもらえることになり、材料のネソとヌイボクの手配までして頂きました。

勝坂遺跡での古代住居の復元に際しては、縄文時代の技術の再現に努められています。古代建築史には素人ですが、茅葺き職人としての経験に基づいた僕の提案も、専門の先生方が検討の上いくつか採用して頂けました。
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「米と鉄の普及以前」にこだわった茅葺きの様子をご紹介します。

生木の状態で現場に持ち込んだネソは、使う前に樹皮が黒く焦げ落ちるくらいまで焚き火で炙ります。
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暖めることで木の繊維をほぐしやすくするのと、樹皮の裏の栄養豊富な部分に虫がつくのを防ぐためだそうです。

充分に火にかけたネソを、雑巾を絞るようにねじり上げてほぐします。文章にすると簡単ですが、若木とはいえ木材を人力でねじるのですから大変です。
ネソ練りと呼ぶこの下拵えが、ネソ巻きの肝となります。
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きちんと練れていないと屋根の上で使う際に折れてしまうし、力任せにねじればちぎれてしまいます。

竪穴式住居の小屋組が栗材で組まれて行くあいだ、数百本のネソを練って準備を進めておきます。
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樹皮を焦がしたネソからは、おいしそうな焼き芋のような甘い匂いが。

茅刈りカレンダー

'09-'10シーズンの茅刈りイベント、出揃って来たのでご案内いたします。
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12/12 茅刈りイベント in 花山中尾台 終了

1/9 茅刈り体験会ヨシ刈り編 カヤカル@淀川 終了

1/10 茅刈り体験会ススキ編 カヤカル@神戸落合その1 終了

1/16 茅刈り体験会ススキ編 カヤカル@神戸落合その2 終了

1/24 刈り初め2010 茅場つくり 終了

1/30.31 竪穴住居の屋根を復元しよう - 茅刈り- 終了

2/6 茅刈りイベント in 淡河 終了

3/7 かろまい!'10 準備中

3/6.7 カヤカル '10@神戸・長尾 終了

イベント詳細は下記 ↓

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◎[カヤカル '10@神戸・長尾]

古民家族が西宮市船坂集落で再生中の古民家の屋根に葺くために、造成地の道路法面に生えている茅を刈り取ります。
6日は17:00から赤井家(茅葺き古民家)再生現場にて懇親会を予定しています。(希望者のみ)

期日:2010年3月6日(土)、7日(日)
会場:神戸市北区長尾町 人形渡橋南交差点の道路法面 (中国自動車道 神戸三田IC すぐ)
集合:9:30 神戸市北区長尾町上津 「神戸市登録文化財 赤井家住宅」
10:00 茅刈り現地
解散:16:00 予定
参加費:¥500(保険代)両日参加の場合も500円です。(既にボランティア保険に加入されている方は無料)
懇親会参加費:一般参加者1000円前後(6日のみ) 学生無料(赤井さんのご好意)
宿泊プラン有ります(武庫川女子大施設につき女性のみ)
詳細はこちら古民家族HP
申込、問合:info@kominkazoku.jp
締切:宿泊プラン  2月21日
日帰りプラン 2月27日
主催:古民家族
共催:長尾かやぶき保存会
協力:あかい工房、茅葺屋

◎[茅刈りイベント in 淡河]

期日:2010年2月6日(土)雨天順延7日(日)
会場:神戸市北区淡河町荻原 茅場
集合:自家用車でのアクセス:AM10:00 北区淡河連絡所 駐車場有り
公共交通でのアクセス:神姫バス利用 AM9:00発 三ノ宮神姫バスセンターより吉川庁舎行き→淡河本町北下車(9:35分着) バス停よりご案内します。
解散:PM15:00 予定
内容:茅刈り体験
参加費:¥500(保険代、資料代含む)
申込:保険加入のため◯氏名◯住所◯生年月日◯電話番号と、緊急連絡用に◯当日朝に連絡可能なEメールアドレスをこちらまでお送り下さい。
締切:2010年2月4日(木)
定員:20名(申込多数の場合は抽選)
問合:ogo@kusa-kanmuri.jp
持物:弁当、水筒、防寒着、タオル、滑り止め付きの軍手、汚れても良い動きやすい服装でお越し下さい。
主催:淡河かやぶき屋根保存会 くさかんむり
協力:神戸市北区役所、茅葺屋
ご注意:中学生以下は同伴の保護者の責任下でのみご参加頂けます。

◎竪穴住居の屋根を復元しよう - 茅刈り -

期日:2010年1月30日(土)、31日(日)
締切:2010年1月20日
会場:京都市伏見区向島 宇治川河川敷場ヨシ原
詳細、問合:電話 0774-86-5199 FAX 0774-86-5589
主催:京都府立山城郷土資料館
共催:山城萱葺屋根工事

◎[刈り初め2010 茅場つくり]
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期日:2010年1月24日(日)雨天順延31日(日)
会場:神戸市北区淡河町 くさかんむり茅場
集合:AM10:00 道の駅「淡河」
解散:PM15:00 予定
内容:茅場の除伐作業
参加費:無料 「昼食に名物おかんカレーを用意しています!」
申込、問合:ogo@kusa-kanmuri.jp
詳細:http://www.kusa-kanmuri.jp/?p=1185
主催:淡河茅葺き保存会 くさかんむり

昨年の様子はこちら

◎[茅刈り体験会ススキ編「カヤカル@神戸落合」]
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期日:その1/2010年1月10日(日)雨天中止
その2/2010年1月16日(土)雨天順延17日(日)
※同じ内容のイベントを2回行います。ご都合の良い方へご参加下さい。
会場:神戸市須磨ニュータウン内茅場 (神戸市須磨区落合団地白川ランプ周辺)
集合:AM9:45 神戸市営地下鉄名谷駅 北側ロータリー(TAXI乗場)
:AM10:00 現地
解散:PM15:00 予定
内容:茅刈り体験、茅と茅葺きに関するレクチャー(屋外)
参加費:¥500(保険、資料代含)
※2回とも参加される場合でも¥500のみです。
申込:保険加入のため◯氏名◯住所◯生年月日◯電話番号と、緊急連絡用に◯当日朝に連絡可能なEメールアドレスをこちらまでお送り下さい。
持物:弁当、水筒(会場近くにコンビニ有)、タオル、滑り止め付きの軍手、長袖上下の汚れても良い動きやすい服装、斜面で作業できる靴でお越し下さい。
主催:茅葺屋
問合:info@kayabuki-ya.net
ご注意:中学生以下は同伴の保護者の責任下でのみご参加頂けます。
会場周辺には駐車場がありません。
自家用車でご参加の方は須磨パティオ駐車場(有料)等をご利用下さい。

一昨年の様子はこちら

◎[茅刈り体験会ヨシ刈り編「カヤカル@淀川」]
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期日:2009年1月9日(土)雨天中止
会場:淀川十三干潟 ヨシ原(淀川河川公園 西中島地区 隣接)
集合:AM10:00 淀川河川公園 西中島地区 駐車場
解散:PM15:00 予定
内容:ヨシ刈り体験、ヨシズ編み体験(予定)
参加費:無料

申込、問合:中止の決定は当日朝の天候を見て行います。◯氏名◯当日朝に連絡可能なEメールアドレスをこちらまでお送り頂き、参加登録してください。

持物:弁当、水筒、防寒着、タオル、滑り止め付きの軍手、汚れても良い動きやすい服装でお越し下さい。長靴もあれば便利です。
主催:山城萱葺屋根工事茅葺屋
ご注意:中学生以下は同伴の保護者の責任下でのみご参加頂けます。

一昨年の様子はこちら

◎[茅刈りイベント in 花山中尾台]
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期日:2009年12月12日(土) 雨天順延13日(日)
会場:神戸市北区花山中尾台2丁目道路沿い
集合:AM9:30 神戸電鉄花山駅前ロータリー
AM10:00 現地
解散:PM15:00 予定
内容:茅刈り体験、茅と茅葺きに関するレクチャー(屋内)
参加費:¥500(保険、資料代含)

申込:葉書、FAX、Eメールいずれかで、件名「茅刈りイベント」とし、住所、氏名、電話番号、生年月日、性別を記入して、下記まで申込下さい。

定員:30名(申込多数の場合は抽選)
締切:12月4日(金)消印有効
主催:神戸市北区役所まちづくり推進課 共催;花山手自治会
問合:〒651-1114 北区鈴蘭台西町1-25-1 北区まちづくり推進課「茅葺き」係
P/ 078-593-1111(代表) F/ 078-593-1166
E/ kitaku@office.city.kobe.lg.jp

 

0116 カヤカル'10ススキ編@神戸 落合団地

今年は2周連続で開催しました、恒例の神戸のニュータウンでの茅刈り
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初回は少数精鋭で和気あいあいと、2回目は団体さんを迎えて賑やかに、いずれも好天に恵まれて事故もなく。

茅葺きなんて陰も形も無い街の中。でも、20年近く毎年刈り取り続けている茅場には、茅として最高品質なススキが生い茂ります。
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でも、それが「最高の茅」になるかどうかは、刈り取る人の束ね方次第。
「べっぴんの茅」に仕立ててあげてくださいね。

出来上がった茅には、刈って束ねた人の個性が現れますねえ。
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皆さん、愛情込めて刈って頂き、ありがとうございました。

「思ひ草」ことナンバンギセルが花を咲かせたあとが、例年以上に目につきました。
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今年はススキの花穂の付きが少し悪かったような気がしますが、何か関係があるのでしょうか。無いのでしょうか。
人が関わることが植物同士の関係にどう響くのか、里山の営みには不思議なことが一杯です。

みんなで刈ると、すっきりと開けて気持ちが良いです。
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刈り残しや雑草は後日スタッフが処理して、春を迎える茅場の準備が整います。

0109 カヤカル'10ヨシ編@淀川 十三干潟

今年もやって来ました、淀川は十三干潟のヨシ原へ。
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この写真は合成ではありませんよ、念のため。
本当に梅田の目の前に、野鳥が飛び交うこんな草原が。

参加者にはいきなり、鎌と一緒に砥石が配られます。
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刃物は使う前にまず研がねば。
砥石を使ったことがなくても、研がねば。

ヨシ刈りと言えば、この方。
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山城萱葺屋根工事のヤマダさんから、刈り方の説明。

道具と方法を手に入れたら、早速ヨシを相手に挑みます。
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実践あるのみ。

ヨシが枯れきった真冬に刈るので、肌寒い曇りの日は避けたいところですが、お天気に恵まれても海に近い十三干潟では、日が差して地温が少し上がると冷たい海風が吹き込んで来るから、いつも寒かったようなイメージが残っています。
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でも今年は、うらうらと暖かい陽射しの中ほとんど風も吹かずに、のんびり気分で刈ることが出来ました。

動いていないと寒い!何てことがないからなのか、お昼ごはんのあとに何か始まりました。
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普通ヨシズを編むには、錘りを利用した道具が必要なのですが、「手」がいっぱいあれば道具無しでも編むことができそうです。
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あっという間に、ちょっとしたものができましたよ。
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温暖化防止のための壁面、開口部の遮熱には、ヨシズは素晴らしい性能を発揮します。
これからの最新トレンドは、ビルも住宅も屋根は茅葺き!壁面はヨシズ(国産)!

広い広いヨシ原。
でも、本当に茅葺きに適したヨシが生えるところは、限られています。もちろんそれとて相当な面積ではありますが。
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茅葺きに適さないヨシが生えた場所も含めて、ヨシ原全体を効率良く手入れするには、やはり火入れが欠かせないのですが・・・

刈り取ったあとにはゴミが目立ちますね。上流での暮らしの中から流れて来たものです。
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いくらヨシ原が川をきれいにしてくれるといっても、生活ゴミまでは処理してくれません。
「良い子は川にゴミを捨ててはいけません」

Knife Ridge (シリーズ 茅葺く風景)

てっぺんで景色を楽しんでいる訳ではありません(多分)
棟の水平や密度を確認するには、上に立ってみた感覚で確認するのが一番なのです。
棟には杉皮や竹といったデリケートな素材を使っているため、ダメージを与えないように足場に出来るのが、てっぺんの角材(ヒ(樋)と呼びます)しかないという事情もあります。

1212 茅刈りイベント in 花山中尾台

第2回目の開催となる、神戸市北区役所主催の茅刈りイベント
昨日の雨は止んだもののまだ雲は厚く、時折日が差す程度では、午後からの茅刈りまでにススキが乾いてくれるかどうか気を揉む、昨年と似たような展開となってしまいました。
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そんな状況の中で、今回も朝から黙々と参加者のために鎌を研ぐ、丁稚サガラ。

午前中は神戸市の茅葺き民家保存への取り組みと、茅刈りについてのレクチャー。
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そうこうしているうちに弱いながらも陽も射して、アスファルトも乾いて来ました。茅場のススキも乾いている頃でしょう。

そこで、午後から茅場へ移動してみると、 茅が無い・・・
ように見えるくらいに、尾花(ススキの穂)のつきが良くありません。
と、いうかほとんどついていません。
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夏に様子を見にきた時には、勢い良くススキが伸びていたのですが・・・
昨年「みんなで刈っていけば、秋になるごとにススキの穂が輝くようになりますよ」とか、参加者の皆さんに話していた手前、八多町での茅刈りに続いて、なんだか格好のつかないことになってしまいました。

尾花がついていないと、ぱっと見てススキなんだか、雑草なんだか良くわかりません。
ススキの株を探しながらの茅刈りとなってしまいました。
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お米が不作の年には、同じイネ科のススキも生育が悪く、何年か前の冷夏の際には文化財修復のための茅材が、全国的に不足したことがありました。
今年も夏に雨続きだったせいでしょうか?
でも、近くの高速道路法面では一面の尾花が揺れているので、この茅場だけ不作なのが腑に落ちません。

もっとも、刈ってみれば穂は無いながらしっかりと棹は立っていて、束ねて茅に拵えることは問題なくできました。
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むしろ、細くて真っ直ぐで、茅としてはなかなかの品質です。

尾花のついていない棹の先をよく見てみると、一応穂はつくられているものの、開かないまま枯れてしまっているようです。
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さらにその穂の穂首の辺りを見てみると、ハカマに包まれた茎がえぐり取られたように切断されていました。
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何かの虫の食み跡のようにも見えますが・・・
それにしても近辺でこの茅場だけ?全部?

昨年に続いてナンバンギセルの花の跡が見付かりました。
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ススキの地下茎に寄生する植物ですが、こいつが爆発的に増えてススキの精気を吸い取ってしまった訳でも無さそうです。
数はそれほど多くも無くて、万葉集にオモイグサと詠まれた印象通り、控えめに咲いていた感じでした。

道の辺の 尾花がしたの 思ひ草 今さらさらに なにか思はん

来年こそ、一面のススキが秋の陽射しに輝くさまが見れると良いですね。

おまけ。
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文化財課の方が持って来て下さった、サヌカイトの石包丁。
実験!「縄文人は石器で茅刈りをしたのか?」の詳細と検証は、こちらに、いずれ、そのうち、UPされるかもしれません。

僕の個人的な感想としては、肥料喰いの米や麦の本格的な栽培が始まるまでは、葺き替えの度に出る大量の古茅の需要が無いので、分厚い茅葺き屋根を葺くために広い面積で茅刈りをするよりは、もっと他の方法で屋根を葺くと思いますけれども。

1127 八多町の茅刈り

全国茅葺き民家保存活用NWの シンポジウム会場ともなった、八多町の茅葺き公民館の葺き替えに備えた茅刈りが、今年も地元自治会と八多中学校の生徒たちによって行われました。
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茅葺屋も神戸市北区役所「茅葺き係」と、ちょこっとお手伝いに行ってきました。

農村の暮らしの技を伝えながら世代間交流を深めるこのイベント。こういうかたちでたくさんの人たちが、茅葺きに触れて下さっているのを見ると、とてもうれしくなります。
実施にあたってはご苦労も多いかと思いますが、ぜひとも続けて行って頂けたらな、と思います。
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この日の主役は地元のおじさんたちと、中学生・・・

それに、カヤネズミ(の古巣)!
昨年のイベントの際にこの茅場からは、僕が知る限り面積あたり最多の、この「茅ボール」が出て来ました。
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(写真は昨年秋の現地で見付けた、カヤネズミの巣)
さすがに、農村地域で絶えること無く刈り続けられて来た茅場は違うな、と感心したものなのですが・・・

今年は全然出て来ません!
何故?どうして?

「みんなが茅を刈るのは、人の住処と同時にカヤネズミの棲み処をつくることにもなるんだよ」とか、ちょっとイイ話しをして格好つけようと企んでいたのに。
困ったなあ。
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結局、昨年の倍近い面積を刈ったのに、全部合わせてやっと4つ・・・

大勢で刈るのが良くないのかな?・・・いや!まさか、それは昔から変わらないはず。
冷夏だったのとか影響したのかな?・・・そう言えば、ススキの生育も去年より良く無いな・・・

彼等は一体どこへいってしまったのでしょうか?
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(写真は今年の春現場に、御殿場産の茅に紛れて、富士山麓からやって来たカヤネズミ)

1122 茅葺きシンポ@神戸市北区

インフルエンザ対策のために5月開催予定が延期されていた、全国茅葺き民家保存活用ネットワーク協議会 第10回 シンポジウム「都市と農村の協働する茅葺き民家」が、11/21シンポジウム、/22見学会の日程で、神戸市北区にて開催されました。
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初日のシンポジウムは茅葺き民家を移築した八多ふれあいセンターで行われ、神戸における茅葺き再興への取り組みの他、全国各地での活動が紹介されたのに続いて、茅葺きと関わり合う活動を展開している学生たちを招いてのパネルディスカッションが行われました。

僕も自身が茅葺き職人となるきっかけをつくってくれた、母校の神戸芸術工科大学でのカヤテックコミュニティ」について紹介させて頂きましたが、

限界を超えて行こうとする集落での営みの模索を続ける、↓滋賀県立大学「男鬼楽座」、

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廃屋の再生プロジェクトから、むらづくりへ踏み込んで行こうとする、 ↓武庫川女子大学「古民家族」、

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さらに、工学院大学後藤研究室による、山梨県上条集落と福島県前沢集落での実践的な取り組みにについて発表され、活発な質疑応答が行われました。

2日目は地元の手により現役で使われている「下谷上の農村歌舞伎舞台」、再生され市民の集う場となっている「県指定重要文化財内田家住宅」、神戸最大の茅葺き民家である渕上さんのお宅を見学させて頂きました。
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今回特に印象に残ったのは、やはり元気な学生たちの活動報告で、いずれの活動も研究対象としてではなく、当事者として関わって行こうとする覚悟に満ちていたことに感心させられました。

茅葺きの魅力に触れた感動が、先輩から後輩へと生き生きと受け継がれていて、彼等の自主的な活動の継続が、茅葺きを支える人と自然の関わり合う生態系の環、人と人との営みの輪の一部として、既に欠かせない役割を果たしていました。
地道に積み重ねられる活動の様子は、まぶしく、頼もしく、元気を分けてもらう2日間でした。

ごあいさつ

「茅葺き職人のブログ」を訪ねて下さる皆様、
長らく更新が滞ってしまい申し訳ありませんでした。

屋根屋こと私、茅葺屋代表 塩澤は、7月に事故で脊椎を傷めて以来、リハビリのために入院しております。
下肢麻痺は回復の兆しが無く、自分が今でも茅葺き職人であるのか自信が持てませんが、残りの人生も茅葺きを生業として生きて行くことしか考えることができません。
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何よりありがたいことに、周りの人々の暖かい励ましと多大なご助力によって、茅葺屋としての活動は変わらず続けさせて頂けております。
未だ自分が登ろうとしている山の頂が、どれほど高いのかその全容すら眺めることも出来ずにいますが、茅葺きの繋いでくれた人の縁と、命あり上半身が自由であることに感謝して、一歩ずつ前に進んで行こうと思います。

今後とも茅葺屋をよろしくお願いいたします。